みたにっき@はてな

三谷純のブログ

最近観た映画

ここ最近、移動中の飛行機内での鑑賞を含めると、「パッセンジャー」「モアナと伝説の海」「ゴースト・イン・ザ・シェル」「ラ・ラ・ランド」と、複数の映画を観る機会がありました。

 

いずれも現在上映中で、話題の新作ばかりということで、映像の美しさからストーリーの深さまで、とても楽しく鑑賞することができましたが、見終わった後にもいろいろと考えさせられる、という点からは「パッセンジャー」が一番印象深いものでした。

 

地球を旅立った宇宙船が目的地の惑星に到着するまでの120年間、冬眠をしている乗客たちの中で、ただ一人、ジムという名の男だけが予定より90年も早く目が覚めてしまう。というユニークな状況設定の下、その後の展開にハラハラさせられます。

 

ネタばれになってしまいますが、ジムは孤独に耐えきれなくなって、ついには一人の女性を冬眠から覚ましてしまい、二人で共に宇宙船の中で生き、そして天寿を全うするという具合にストーリーが進みます。

 

ここでもし、自分が主人公と同じような状況に置かれたとしたら、いったいどうするだろうか、とか、起こされた方の立場だったらどうだろうか、などと考えることは、なかなかに楽しい思考実験な気がします。


主人公と同じ立場だったら、冬眠中の乗客を起こすようなことをするだろうか。逆にもしも、手あたり次第に、たくさんの乗客の目を覚まさせたら、どのような事態になるだろうか、など。など。 

 

ところで、映画の中では、睡眠中の乗客に助産師がいることを示すシーンがあり、これは宇宙船の中で子どもをつくるという伏線だと思い込んで観ていたのですが、そのような展開にはならずに、見事に期待はずれとなりました。

 

でも、これはきっと、鑑賞者が映画を観た後に、いろいろ考えるきっかけを与える仕掛けだったのでしょう。

 

二人が子供を身ごもった場合に、どのような展開になるだろうか、と鑑賞者に想像させるための伏線なのだと、しばらくしてから思いました。

 

90年という時間を、成人した人間は生き続けることができませんが、世代を経ることで90年間を乗り越えることができます。仮に宇宙船の中で3世代を経た場合、そこには、どのような社会ができているだろうか。そして、90年後に目覚めてくる他の乗客とどのように対峙するだろうか。など。

 

そんなことを考えるきっかけを与えてくれる映画ということで、「パッセンジャー」は、とても印象深いものでした。

つくばエキスポセンターでの折り紙ワークショップ

本日、つくばエキスポセンターにて「ふしぎな立体折り紙を折ってみよう」というタイトルでのワークショップを開催しました。

 

 

f:id:JunMitani:20170507000713j:plain

http://www.expocenter.or.jp/?post_type=event&p=26860

 

午前と午後の2回の開催で、それぞれ1時間。定員は20名で事前申込制。参加費300円(加工済みの用紙代)での実施となりました。

 

ずいぶんと早い段階で予約がいっぱいとなったそうで、希望しても参加できない方がいらしたかもしれません。

 

20分くらい、折り紙の設計の話などをした後で、上記の写真にある作品に挑戦してもらいました。

 

ごく簡単なものですが、曲がった線を初めて折る、という方にはなかなか難しいようです。

 

参加者20名というのは、学生1名にお手伝いをいただいて、ちょうど全体に目を配ることができる規模でした。

 

 

つくば市近辺の穴場スポット:小貝川スポーツ公園

つくば市の小貝川スポーツ公園。

その一角に、滑らかに舗装されたスケートコースがあるのですが、あまり知られていないようで、いつ行っても閑散としています。

 

ゴールデンウィークなのに、写真のような感じ。全然人の気配がありません。

 

普通の公園だと敬遠されがちな、ローラースケートの類が滑りやすいコースで思い切りできるので、子供も喜びます。

 

f:id:JunMitani:20170507001814j:plain

 

f:id:JunMitani:20170507001827j:plain

空間曲線での折り(2)

昨日に、1つの曲線を折るだけで面白い形が作れたので、今日も1つ作ってみました。

造形的には、昨日のものほど意外さは無いですが、1枚の紙、1つの曲線だけでも、いろいろな表情を表現できそうな気がします。

(写真の撮り方次第という気もしますが。)

 

少し先の話になりますが、生け花をされている団体からの講演依頼をいただいているので、その時に、このような造形を皆さんに挑戦してもらったら面白いものができるのではないかと思っています。

 

f:id:JunMitani:20170507002542j:plain

空間曲線での折り

今日は、本日作った折紙作品の紹介だけで済ませてしまいます。

 

A4サイズの長方形に、曲線を1本だけ描いて、その線を折って作った造形です。

きちんと設計したわけではないです。

紙と遊んでいると、ふと面白いなという形に出くわすことがあります。

そんなアプローチで作ってみました。

 

最近は時間がとれなくて、いろいろ計算した結果の緻密な折りを繰り返す、なんてことができないため、できるだけ手抜きした結果の造形ですが、えてしてそういう時の方が、紙が作る自然な美しさが出てきたりするもので、面白いなと思います。

 

f:id:JunMitani:20170502225928j:plain

学会プログラム委員の仕事

本日は、VCシンポジウム(Visual Computing / グラフィクスとCAD 合同シンポジウム 2017 )のプログラム委員会による採録論文検討会に参加してきました。

 

場所は東京大学の本郷キャンパスなので、筑波からだと、なかなか移動に時間がかかります。

 

このVCシンポジウムは、コンピュータグラフィックス関係では規模の大きい研究発表の場で、今年は6月に早稲田大学で開催されます。

 

今日は、約20名のプログラム委員が出席する中で、投稿された論文から、どの論文を当日の登壇発表に採択するかを議論しました。


あまり内部の様子は知られていないと思うので、簡単に紹介したいと思います。

 

まず、投稿された論文は1件につき3名の査読者が割り当てられます。
論文の著者も査読者も、互いに名前がわからないダブル・ブラインドで行われます。
論文の内容は各査読者によって1~5点で評価され、Webシステムに登録されます。
その後、同じWebシステムの掲示板を使って、査読者間で査読結果に対する議論を行って採否の方向を決定します。
その際、プライマリという第一査読者が議論をリードします。

 

さて、ここまでがオンラインでの話で、本日は実際にプログラム委員が集まっての議論を行ったわけです。


論文、1件ずつに、プライマリが査読結果のコメントを述べ、全体で採否の決定を行います。極端に得点が高い論文や低い論文は、あまり議論をせずに決定しますが、ボーダー付近の論文については、専門分野が近い委員を中心に議論が行われます。

 

自分の著者に含まれる論文について議論されるときには、公平性を担保するために廊下に出て待機します。

 

こうして、本日は約5時間の議論の末、無事に採録論文が決定したのでした。

 

普段あまり見えない、論文採否に関する議論の舞台裏は、こんな感じなのです。

 

プログラム委員会の皆さま、お疲れ様でした。

大学改革が難しい理由

これまでに、大学改革と言う呼び名の各種の取り組みが、幾度となく繰り返されてきました。

 

大事なので、もう一度繰り返しますね。

 

これまでに、大学改革と言う呼び名の各種の取り組みが、幾度となく繰り返されてきました。

 

私は国立大学教員として10数年程度の経験しかありませんが、その間、毎年のように大学改革と言われ続けてきました。おそらくは、それ以前からも改革改革の呼び声が続いてきたことでしょう。

 

正直なところ、改革という言葉に対する感覚も麻痺してしまった感じもします。


今回話題になっているこちらの話も、つまるところは給料と書かれていますが、もう少し読み込むと、優れた研究者に見合った処遇の問題ということになるでしょう。

 

withnews.jp

 

もっと踏み込めば、研究のできる教員には研究しやすい環境を、そうでない教員には、研究以外で力を発揮する場の提供を、という、適材適所の発想が、なぜ大学ではできないのか、ということに行きつきそうです。


これだけ大学改革と言われ続けながらも、研究できる人にはそれに報いることで全体の最適化を図る、という経済の原理では当然と思えることが、なぜできないのでしょうか。


全体の最適化の必要性は、大学にいる人たちだって、ほぼ全員わかっています。

でも、できない。

実現することがとても難しいのです。

 


大学の教員は、商店街の個人経営者に喩えられることがあります。

 

私から見た大学の様子を、商店街の運営に置き換えて書いてみたいと思います。


===

商店街では、商売のネタは店舗の主が自分で決め、必要な予算も店主が自分で外部から集めてきます。

商店街には、花屋もあれば、金物屋もあり、飲食店もあります。同じ商店街に軒を並べていても、商売の内容は様々です。

 

商店はそれぞれ独立していますから、他の店の商売に干渉するようなことはなく、店主は自分の責任で店を運営します。

 

当然、時流に乗って華やかな店もあれば、昔ながらの商品をこだわりを持って取り扱う店もあります。外部から大きなお金を入れて、大量の店員を雇用し、幅広く展開をしている店もあれば、少人数で小さく運営している店もあります。


商店ごとのつながりは緩く、商店街全体での取り組みは、皆が参加する組合で協議します。


商店街の美化活動には、皆が労力を出し合います。当然、売り上げの大小にかかわらず、平等に参加することが求められます。パンフレットの作成や、組合費の管理などは、年度単位で交代する委員会で回していきます。

組長は一応選挙をしますが、ほぼ持ち回りで順番に数年単位で担当します。

 

これまでの経営は、こんな感じでも十分にうまく機能し、個々の店主がそれぞれに経営努力することで、商店街全体がうまく回っていました。

 

しかし、時代は変わります。

 

人口が減りつつある中、郊外型の大型店も増え、商店街全体の売り上げは低下傾向となってきました。

 

商店街ランキングが毎年発表されるようになり、お客さんがランキング上位の商店街に流れるようになってきました。

 

さあ、大変です。

 

さっそく商店街活性化のための委員会を立ち上げ、新しくパンフレットを作ったり、商店街のWebページをつくったり、または祭りの開催回数を増やしたり、花火大会をしたり、あれこれ頑張ることとなりました。

 

それ以外にも、公衆無線LANの整備、避難経路整備、AEDの設置、防災訓練、電子カード決済への対応、衛生管理、防犯カメラの設置などなど、時代の要請に応じて、すべき仕事は増える一方です。

 

「私の店舗は売り上げが大きく、商店街の活性化に貢献している。売り上げの小さい店が、そういった諸々の仕事を引き受けるべきだ」


という理論など通るはずがありません。
これは、商店街全体の問題なのですから、全員で取り組むべき問題です。


こうして、委員会の数はいくつも増え、会議も連日開かれることになります。


そんな様子を見て、国も地方の商店街の支援に乗り出します。
いろいろな改革のための方針を示し、「商店街活性化のためのスーパーグローバル助成金」を整備します。

 

商店街では、さっそく助成金をもらうために申請書を書くこととしました。
「グローバル化」というキーワードを含めるために、「イタリアの○○モールとの提携」とか「インバウンド消費を呼び込むための海外に対する広報」とか「Webページの五か国語対応」など、助成金がもらえる可能性が高そうな申請書を頑張って準備します。

本当に実効性があるかどうかわかりませんが、まずは助成金をもらうことが第一です。

 

さて、こうしてめでたく国からの助成をもらえることになりました。
今度は、申請書に書いた通りのことは少なくとも実行しないといけないので、能力のある若手店主が駆り出され、イタリアに行ったり、中国語のパンフレットを作ったり、Webページの多言語化の対応をすることになります。

 

こうして、本来の商売とは異なる仕事が増え、売り上げは増えるどころか減る一方です。

 

国は矢継ぎ早に助成金のためのプログラムを整備します。「海外の優れた店舗の誘致支援プログラム」「魅力的な商店街づくりプログラム」「大手企業との連携推進プログラム」などなど。

 

毎年毎年、プログラムへの申請書作成と、プロジェクト推進、その後の報告書に明け暮れる毎日です。

 

それでも成果が出ないので、「より厳密な業績評価」が導入されるようになりました。

 

国も商店街も、市民の期待に応えるよう精いっぱい頑張っています。

 

と、そうこうしているうちに、能力のある若手店主は、香港の商店街で一旗揚げようと出て行ってしまいました。

 

===

この商店街の、それぞれの店主が活き活きと働き、街の豊かさに貢献できるようにするには、いったいどうしたらよいでしょう。

私は、明快な答えを持ち合わせていません。

 

6月中旬に発売されるという、次の書籍の内容が気になります。

www.nakanishiya.co.jp