アニメ「正解するカド」に登場する球体折り紙(2)
今シーズンのアニメで話題になっている「正解するカド」に登場する球形の折り紙について、2つ前のエントリで紹介記事を書きました。
球体の折り紙が実際に作れることと、その型紙をTwitterで紹介したところ、多くの方に関心をもっていただけたようです。
その日のブログのアクセス数は2万を超え、現時点で700を超えるはてなブックマークが付いています。また、最初のツイートはインプレッション(見ていただいた回数)は32万を超えました。
正直なところ、デスノートとシン・ゴジラの時以上の反響の大きさであるような感じで、アニメのパワーと、情報拡散のスピードに改めて驚いています。
さて、続く第6話では、次のような6つの球体がつながった状態を皆が作り上げるシーンが登場しました。このような形は実際に作れるのでしょうか?
「正解するカド」第6話の冒頭シーンより (C)TOEI ANIMATION,KINOSHITA GROUP,TOEI
1枚の紙でツルツルな球を作ることはできませんが、外側に襞を折り出す(プリーツ)か、内側に襞を押し込む(タック)の技術を用いることで、球形を作ることができます。
前回のブログのエントリでは、1つの球体と、球体が2つ連結した状態のものを紹介しました。
球体はいくつでも連結できることを述べましたが、球体の大きさは、外に折りだすプリーツのサイズで調整できるので、異なる大きさのものを連結することもできます。
私は以前に、筒の状態から立体的な折り紙のかたちに変形する様子をアニメーション表示するソフトウェアを作ったことがあったので、それを使って大きさの異なる6つの球が連結したものを折り出す様子を再現してみました。
Twitterでは、少しふざけて次のように書いてしまいましたが、
CGのアニメーションでは、折り線の位置が少しずつ移動しているので、実際に作るときとは異なります。実際には、筒を閉じない状態で上から順番に捩じるようにして1つずつ球を作っていきます。
本当に、CGのアニメーションのように作れると思った方には、ごめんなさい。
ただ、紙の大きさと形はCGアニメーションの最中でも常に一定(いわゆる等長変換)ですので、布のように柔らかいものであれば不可能ではないと思います。また、CGのように折り筋が移動するような状態を、折り紙研究の世界では moving crease と言って、連続的な形状変化を伴う折り操作の1つとみなされています。豆知識。
さて、実際には左下のような展開図を折ることで、右下のような形を長方形の紙から作り出すことができます。
週末にちょっと試してみたのですが、正直なところ、なかなか苦戦しました。
一筋縄ではいかないですが、展開図のPDFファイルをこちらに置いておきましたので、興味がある方は挑戦してみてください
http://mitani.cs.tsukuba.ac.jp/dl/2017/connected_six_spheres_(J_Mitani2017).pdf
A3サイズより大きい紙でないとうまくいかないと思います。
これで、折り紙の幾何学に興味をもってくださった方は、出版社さんや書店さんが宣伝してくださっていますので(^^; 拙著「立体折り紙アート」のページ
https://www.nippyo.co.jp/rittai_origami/
をご覧いただければと思います。
[3F/数学]【話題書】三谷純先生の『立体折り紙アート』入荷しました!今晩22時30分からTOKYO MXで放映されるアニメ『正解するカド』に、収録作品「2つの球の連結」をモデルにした“ワム”が登場予定とのこと!コンピュータを駆使して生まれた最先端の折り紙の魅力に触れてみませんか pic.twitter.com/2sjB7e6obG
— 書泉ブックタワー (@shosen_bt) 2017年5月12日
肩の力を抜いた働き方
今朝は9amから、アメリカの研究者とSkype Meetingしましょう、という予定を組んでいてたので、その5分前にはPC上でSkypeを起動してスタンバイしていたのですが、「今、移動中なので、ちょっと無理。次はいつだったら大丈夫?」というメッセージが届いて、今日の打ち合わせはお流れになってしまったのでした。
がーん。
まぁ、この手の話は海外の研究者との間では日常茶飯事で、今更驚かないのですが、この気楽さには少し羨ましさを感じてしまいます。
私の観測範囲などたかがしれていますが、日本ほど勤勉にキッチリ物事をすすめようという国民性を持った国はなくて、海外のどこに行っても、あらあらまあまあ、と口に出てしまいそうなくらいルーズで、ずいぶんな適当ぶりが目につきます。
学会の運営もなんとなく適当だったり、当日予定されていたイベントが突然にキャンセルになったり、言っていることが二転三転したり、想定外のタイミングでワークショップを要求されたり。
このようなことが頻繁に起こるので、海外に行った時には、想定外の事態が起きてもかなり平穏な気持ちで対処できるようになっている気がします。
少し街に出れば、コンビニの店員さんがレジの前でアイスを食べていたり、コーヒーショップの店員さん同士で話が盛り上がっていて、なかなか注文を取ってくれなかったり、タクシーの助手席に運転手の恋人と思しき人が乗っていたり、日本では見られないことを目にしてきました。
海外の人に仕事のメールを送ると「今バカンス中なので、○日以降にメールしてください」という自動返信メールが届きますが、日本の企業の人から深夜に書かれたメールが送られてきたりするのを見ると、この働き方の違いはどこから来るのかな、と考えてしまいます。
勤勉を尊ぶ精神は大事なのでしょうが、私たちはいつの間にか、自分たちで自分たちを厳しく縛り付けてしまっているような気もします。
厳密にしっかり対処すべきところは、しっかり対処すべきでしょうが、意外と世の中、そんな場面は多くなくて、それ以外の所では肩の力を抜いて、のんびり楽しく仕事ができたらいいな、と思います。
アニメ「正解するカド」に登場する球体折り紙
東映のアニメ「正解するカド」が話題となっているようです。
私もAmazon プライムで初回から見てきていて、そのストーリー展開の面白さから、毎回の放映を楽しみにしています。
フラクタル図形がメインに位置づけられていて、幾何学好きには嬉しい設定です。
これまでの話の展開として、無限の電力を生成できる謎の球体「ワム」が登場するのですが、つい先日に放映された第5話では、そのワムの製造を紙を折ることで実現するシーンが登場しました。
私は、以前から球体の折り紙を設計、制作してきていましたので、事前に制作サイドから連絡をいただき、「資料協力」という形で関わらせていただきました。
(と言っても、実際には何もしていません。。私がこれまでにインターネット上で公開してきた情報を参考にしていただいただけです。)
最初にお問い合わせをいただいたときには、「正解するカドってなんだ?」という状態でしたが、いろいろと制作の様子などをWebで知って、とても面白そうな内容だったので、実際の放映を見るのを楽しみにしていました。
今回、第5話のエンドロールに名前を入れていただくことができ、このような現在話題となっているアニメに少しでも関わることができたことを嬉しく思っています。
さて、私がこれまでに作った球体の折り紙は次のようなもので、左側が16枚の襞を持つ球体です。右側は、これを2つ連結した状態のかたちを1枚の紙で作り出したものになります。
勘の良い方は気づいたと思いますが、球体は2つでも3つでも4つでも、いくつでも連結した状態を1枚の紙で作ることができます。その分、実際に折り上げるのは難しくなりますが。
これらの展開図は、拙著「立体折り紙アート」の特設ページで無償公開されています。
それぞれ、Chapter1, 2に含まれますので、興味がありましたら、ダウンロードして挑戦してみてください。
慣れないと難しいと思います。
本当にきれいに作りたいと思う場合は、A3サイズの少し厚手の紙に印刷し、先の固いもので折り筋を付けるようにしてみるとよいでしょう。輪の状態にするときに、両端を閉じて固定する必要があるので、ノリシロを確保して糊付けするとよいでしょう。
今から7年も前になってしまいますが、当時のメイキング動画がこちらにあります。
球体の折り紙は、自分でこれまでに作ってきたものでも気に入っているものの1つです。昨年末には、この球体をたくさん作って、つくば市の姉妹都市であるフランス・グルノーブル市にクリスマスオーナメント用に提供したこともあります。
また、2010年から約5年間ほど、新宿伊勢丹の正面玄関を入ったところで、次のような写真のオブジェを展示させていただきました。球体が縦に積み上げられているので、なんとなくアニメに登場した構成に似ています。
昨年度には、映画「シン・ゴジラ」と「デスノート Light up the NEW world」の両方に関わらせていただきましたが、今回は、アニメにも幾何学折り紙が登場したということで、なんだか立て続けに話題にしていただけて、嬉しくもあり、驚いてもいます。
多くの方に立体折り紙の魅力を知ってもらえて幸運です。
以下は参考までに。
最近観た映画
ここ最近、移動中の飛行機内での鑑賞を含めると、「パッセンジャー」「モアナと伝説の海」「ゴースト・イン・ザ・シェル」「ラ・ラ・ランド」と、複数の映画を観る機会がありました。
いずれも現在上映中で、話題の新作ばかりということで、映像の美しさからストーリーの深さまで、とても楽しく鑑賞することができましたが、見終わった後にもいろいろと考えさせられる、という点からは「パッセンジャー」が一番印象深いものでした。
地球を旅立った宇宙船が目的地の惑星に到着するまでの120年間、冬眠をしている乗客たちの中で、ただ一人、ジムという名の男だけが予定より90年も早く目が覚めてしまう。というユニークな状況設定の下、その後の展開にハラハラさせられます。
ネタばれになってしまいますが、ジムは孤独に耐えきれなくなって、ついには一人の女性を冬眠から覚ましてしまい、二人で共に宇宙船の中で生き、そして天寿を全うするという具合にストーリーが進みます。
ここでもし、自分が主人公と同じような状況に置かれたとしたら、いったいどうするだろうか、とか、起こされた方の立場だったらどうだろうか、などと考えることは、なかなかに楽しい思考実験な気がします。
主人公と同じ立場だったら、冬眠中の乗客を起こすようなことをするだろうか。逆にもしも、手あたり次第に、たくさんの乗客の目を覚まさせたら、どのような事態になるだろうか、など。など。
ところで、映画の中では、睡眠中の乗客に助産師がいることを示すシーンがあり、これは宇宙船の中で子どもをつくるという伏線だと思い込んで観ていたのですが、そのような展開にはならずに、見事に期待はずれとなりました。
でも、これはきっと、鑑賞者が映画を観た後に、いろいろ考えるきっかけを与える仕掛けだったのでしょう。
二人が子供を身ごもった場合に、どのような展開になるだろうか、と鑑賞者に想像させるための伏線なのだと、しばらくしてから思いました。
90年という時間を、成人した人間は生き続けることができませんが、世代を経ることで90年間を乗り越えることができます。仮に宇宙船の中で3世代を経た場合、そこには、どのような社会ができているだろうか。そして、90年後に目覚めてくる他の乗客とどのように対峙するだろうか。など。
そんなことを考えるきっかけを与えてくれる映画ということで、「パッセンジャー」は、とても印象深いものでした。
つくばエキスポセンターでの折り紙ワークショップ
本日、つくばエキスポセンターにて「ふしぎな立体折り紙を折ってみよう」というタイトルでのワークショップを開催しました。
http://www.expocenter.or.jp/?post_type=event&p=26860
午前と午後の2回の開催で、それぞれ1時間。定員は20名で事前申込制。参加費300円(加工済みの用紙代)での実施となりました。
ずいぶんと早い段階で予約がいっぱいとなったそうで、希望しても参加できない方がいらしたかもしれません。
20分くらい、折り紙の設計の話などをした後で、上記の写真にある作品に挑戦してもらいました。
ごく簡単なものですが、曲がった線を初めて折る、という方にはなかなか難しいようです。
参加者20名というのは、学生1名にお手伝いをいただいて、ちょうど全体に目を配ることができる規模でした。
つくば市近辺の穴場スポット:小貝川スポーツ公園
つくば市の小貝川スポーツ公園。
その一角に、滑らかに舗装されたスケートコースがあるのですが、あまり知られていないようで、いつ行っても閑散としています。
ゴールデンウィークなのに、写真のような感じ。全然人の気配がありません。
普通の公園だと敬遠されがちな、ローラースケートの類が滑りやすいコースで思い切りできるので、子供も喜びます。
空間曲線での折り(2)
昨日に、1つの曲線を折るだけで面白い形が作れたので、今日も1つ作ってみました。
造形的には、昨日のものほど意外さは無いですが、1枚の紙、1つの曲線だけでも、いろいろな表情を表現できそうな気がします。
(写真の撮り方次第という気もしますが。)
少し先の話になりますが、生け花をされている団体からの講演依頼をいただいているので、その時に、このような造形を皆さんに挑戦してもらったら面白いものができるのではないかと思っています。