みたにっき@はてな

三谷純のブログ

曲線折りでのタイリングパターン(エッシャー的な)

上野の森美術館で、エッシャー展が行われています。

ミラクル エッシャー展 公式ホームページ | 見どころやチケット情報など 

 

大変盛況なようですが、僕自身も、子どもの頃に初めて見たエッシャーの不思議な絵に魅せられて、どういう仕組みになっているのだろうかと考えあぐねた経験を持っています。

 

直接エッシャーの作品のどれかに関係するわけでは無いですが、なんとなくエッシャーっぽいタイリングパターンの曲線折り紙を作ってみました。

 

 

サカナのような先のとがった形が、左側では上を向いて並んでいて、右側では下を向いて並んでいます。エッシャーのモーフィングの技法っぽいと言えなくもないような気がします。

よく見ると、上を向いた形は凹。下を向いた形は凸の曲面でできています。

 

全体は下の写真のように波打った形をしています。先ほどの、正面から撮った様子とはだいぶ印象が違います。全体としては左側が凸で、右側が凹に湾曲しているのです。

 

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展開図は下図の通り。山折りを実線、谷折りを破線で示しています。

 

展開図のPDFファイルをこちらで公開しているので、興味がありましたら作ってみてください。

http://mitani.cs.tsukuba.ac.jp/dl/2018/20180614_curved_crease_tiling_mitani.pdf

よく見ると気づくと思いますが、すべて同じ形の曲線で構成されています。

 曲線の形のテンプレートを1つ作っておくと、あとはそれをボールペンなどの先の硬いものでなぞるだけで、綺麗に折り筋を付けることができます。

 

折った後に凹となる領域(へこむ部分)に色を付けてみると、次のようになります。凹になる部分と凸になる部分が、折り線を挟んで隣り合っていることがわかります。凹と凹、凸と凸が並ぶことはありません。

 

このように凹凸を交互に配置することが、曲線で綺麗に折れる形を作る際の大事なポイントです。

 

大学をとりまく環境

内閣府の科学技術・イノベーション会議に非常勤で勤め始めて1年半が経ちました。

今は年度替わりの時期となり、各部署では恒例の人事異動でバタバタしているところです。私も4月から席が変わります。

 

これまでの期間、内閣府の内側から、大学改革に関する様々な立場からの意見を耳にしてきました。大学教員としては、異を唱えたいと感じるもの、耳の痛いもの、さまざまです。

そこで、各立場からの典型的な意見をまとめてみました。

結果、大学教員としてはかなり自虐的な内容になってしまいました。。

 

※ 以下の記述は個人的なもので、根拠のない推測も多分に含まれます。

 

■ 大学教員
学術研究は、まさに人類の叡智を拡大するための知的活動である。大学教員は、知のフロンティアに位置し、科学技術、人文社会学等の広範な領域において、新たな知の探究を行ってる。このような研究者を擁する大学は、知識の貯蔵庫として重要な役割も担っている。インターネット上のデータや書籍によるアーカイブだけでなく、まさに生身の人間が知識を開拓、保持、継承しつつ、常に最先端の学術的知識にアクセスできる状態を維持することが、国の役割である。短期的に社会に役立つか否かという、近視眼的なものの見方をしてはいけない。十年、百年の単位で見たときに、学術が社会に大いに貢献してきたことは間違いのない事実である。にもかかわらず、短期的な成果を重視する現在の風潮のもと、豊かな学問の土壌が、今まさに流れ去ろうとしている。国は産業界ばかり見るのでなく、学術的な知の価値を適切に評価しなくてはいけない。

昨今は、大学への運営費交付金が削減される中で、大学教員は競争的資金を獲得するために振り回されている。申請書類、報告書の作成に追われるだけでなく、基盤的な予算が減る方向であるために、事務職員の削減や若手教員が任期付きにならざるを得ないなど、研究環境は悪化の一途である。我々が大学の取り組みとしてできることは非常に限られている。政府、産業界からの支援をお願いしたい。


■ 財務省
我が国の財政は危機的な状況であることは周知の事実である。しかしながら、科学技術関連予算は実際には減っていない。それどころか、2000年以降は大幅に増加しているのが事実である。18歳人口は減っているのにもかかわらず、である。もうこれ以上増やすことなど、とうていできない。むしろなぜ、これだけの予算を投じているのに、世界的にわが国だけ研究力が低下している状況であるのか理解に苦しむ。研究費に対する論文数を見ると、日本は極端に論文生産性が低いというデータもある。大学の運営に問題があるのではないか。お金を入れればよい、という意見は短絡的にすぎないか。まずは大学が抱える課題に対して真摯に向き合い、自ら経営努力をする必要がある。現在の国家財政状況のもと、さらに予算をつける必要があるというのであれば、財務省だけではなく、国民全体の理解を得る努力が求められる。

 

■ 文部科学省
運営費交付金の削減は既定路線であり、これを文部科学省の力で増額することはできない。大学は、何の努力もせずに配分される交付金の減額を嘆くのではなく、我が省が苦労をして財務省を説得し、どうにか獲得した競争的資金を有意義に活用する努力をして欲しい。競争的資金は、大学改革を積極的に推進する大学に優先的に配分されるものであるから、これを有効活用して、大いに大学改革を進めて欲しい。とくに大学院教育の改革、グローバル化、産学連携など、我が国の大学が弱いとされている点を、十分に強化するように。入試改革も当然すべきである。さらに、民間企業からの寄附や共同研究費を獲得するなど、自らの力で財政基盤を強化する努力をして欲しい。

 

■ 産業界
大学における基礎的な研究が重要であることは百も承知している。大手民間企業の中央研究所が衰退した今、産学連携は経済発展のために不可欠であり、大学での基礎研究には大いに期待をしている。必要であれば、積極的に投資をしたいと思っている。しかしながら、我々は企業である以上、研究費を大学に投じるのであれば、投資する以上の成果が得られることが大前提となる。この点において、日本の大学はまったく頼りにならない。優れた研究をしている研究室の存在も知っているが、組織として小さく、多額の研究費を長期に渡って投じる相手として心もとない。今の大学は組織的なマネージメントができていないし、研究内容も世界的に見ると最先端とは言えないものも多い。総合的に検討すると、共同研究は米国の大学と行う方が良いということになってしまう。企業からの大学への投資を期待するのであれば、民間企業からの理事を入れるなどしてガバナンスを強化し、大学経営を抜本的に改革すべきである。さらに言えば、大学は企業が求める人材育成を行えていない。大学で学んだ専門性を、そのまま活用できるような職場は少ない。最先端のIT技術を使いこなす能力とともに、コミュニケーション能力、プレゼン力、そういった総合的な人間力をもった人材を育成する努力をするべきだ。


■ 学生の保護者
大学の授業料は右肩上がりだ。これだけの費用負担をする以上、それに対する資本的な見返りを期待するのは当然である。端的に言えば、卒業後には優れた企業に就職できることが保証されるような教育および進路指導をして欲しい。申し訳ないが、大学の教員の研究予算や研究時間の不足などの問題には関心が無い。それだけ環境が悪いのであれば、大学院、ましてや博士後期課程への進学などに、我が子を勧めることなどできない。最近では、入試ミスや論文不正のニュースを目にする。大学教員は、もっと気を引き締めるべきではないか。

 

■ 内閣府
今の大学の惨状には目も当てられない。危機的な状況であり、改革は、もはやまったなしである。文部科学省の高等局に大学運営をすべて任せていられない。GDP600兆円を達成するために科学技術イノベーションは必須であり、第5期科学技術基本計画においても、大学改革は重要な項目に位置づけられている。今後は我々内閣府としても積極的に関与することとする。大学改革を進めるうえで、足枷となっているような規制があれば、法改正をも積極的に行っていく。まずは、寄附税制の改革、大学間の統廃合を進めやすくするような改正に取り組む。我々が司令塔として、科学技術関連予算の拡充にも努め、SIPやImPACT、PRISMなど産学を巻き込んだ数百億円規模の国家プロジェクトも進める。これを呼び水として、大いに日本経済に貢献して欲しい。指定国立大学も拡大する。これだけ本腰を入れているのだから、大学も本気になって欲しい。

 

■ 世間一般
大学の教員は、授業は片手間。それ以外は好きな研究ができているようで羨ましい。事実、我々は在学中に大したことを学んだ記憶がないし、社会人になってから役立っていることは少ない。大学は競争の激しい民間企業と違って倒産の心配もないのだから、大学の教職員は気楽な仕事である。研究活動が人類の叡智への貢献であると標榜するのであれば、研究費が足りないなどと金銭的なサポートを要求するばかりではなく、その知を世間に還元し、自らその価値を世に問うべきである。科学技術、とくに情報科学の分野においては、GoogleやMicrosoftなど、米国の民間企業の方がはるかに最先端を行っているのではないか。人文社会学の分野では、年に1本も論文を書かない教員もいると聞く。モチベーションを失った教員、能力のない教員の処遇を改めるなど、自ら運営を改革する努力を行うべきである。

 

■ 大学
かように、大学の置かれた環境は厳しい。ついては、教員諸君においては、世間の期待に応えるべく、学部教育改革、大学院教育の実質化、入試改革、グローバル化、産学連携の強化、大学間連携、国際連携、大型プロジェクト予算の獲得、研究力強化、業績評価の厳格化、効率的な大学運営、ひいては大学ランキングの向上のために、それぞれ一層の努力をするように。

 

■ 大学教員
。。。

 

 

 

結びトーラスの話

Twitter で「結びトーラス」の作り方を知りたい、というツイートをみかけて、まっ先に、川崎徹郎先生の下の図を思い出しました。

 

f:id:JunMitani:20171015211718p:plain

http://pc1.math.gakushuin.ac.jp/~kawasaki/HTMLSurfaces/htmlSurfaces30.html

 

以前に日本数学会のマークとしても使われていたもので、とても印象深く覚えていました。

この図形を「ミカンの中に結んだ管が入っているような曲面」と説明している文章が、僕にはとても可笑しくて、図形科学の授業のなかで「百聞は一見に如かず」の例として紹介したこともあります。

『みなさん、「ミカンの中に結んだ管が入っているような曲面」と言われて、どのような形を想像しますか? この図形を説明したものですよ。やっぱり、言葉で形を伝えるのは難しいですね。正確な図を描くことが大事です。』みたいな感じで。

 

でも、この曲面が実際に、どのような数式で表現されるのか、この曲面がどのような意味を持つのかはよく知りませんでした。

 

その後、再びTwitterで、次のページにて説明が記載されていることを知りました。

mathematica.stackexchange.com

こちらの説明がとてもわかりやすかったので、上記のページから図を引用して紹介します。

 

まず、次のようなTorus knotのパスを描きます。

 

f:id:JunMitani:20171015212351p:plain

Torus knot については、Wikipediaに詳しいです。

Torus knot - Wikipedia

 

そして、この経路に沿って円を掃引して、パイプ状にします。

enter image description here

後は、これをひっくり返すだけ。

具体的には、表面上の点に対して、特定の点からの距離の逆数をかけた位置に移動することで、遠くの点は近くに、近くの点は遠くに射影されます。

その結果、次のような図が得られることになります。

enter image description here

この図は、次のような一連の Mathematica のコマンドで描くことができるそうです。

f[t_] := With[{s = 3 t/2}, {(2 + Cos[s]) Cos[t], (2 + Cos[s]) Sin[t], Sin[s]} - {2, 0, 0}]
v1[t_] := Cross[f'[t], {0, 0, 1}] // Normalize
v2[t_] := Cross[f'[t], v1[t]] // Normalize
g[t_, \[Theta]_] := f[t] + (Cos[\[Theta]] v1[t] + Sin[\[Theta]] v2[t])/2

s3Proj[v_] := v/Norm[v]^2
ParametricPlot3D[
Evaluate@s3Proj[g[t, \[Theta]] - f[0]], {t, 0, 4 Pi}, {\[Theta], 0,
2 Pi}, Mesh -> None, PlotRange -> All, MaxRecursion -> 6,
PlotStyle -> Opacity[0.5]]

すみません。僕は検証していません。

 

その代わりに、上記のコードと同じことを行うプログラムを JavaScript で作成してみました。

プログラムのページはこちら。

http://mitani.cs.tsukuba.ac.jp/ja/software/js/torus_knot/torus_knot.html

インタラクティブにくるくる回したり、マウスホイールでズームしたりできます。

ずっとズームしていくと、中が見えるようになります。

 

一度できてしまえば、あとは少しパラメータをいじってあげることで、いろいろなバリエーションを見ることができます。

 

こんなのや

こんなの

あとは、こんなのも。

 

おまけにこんなのも。

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JavaScirptはブラウザでコードを見ることができますから、興味があれば、自由に改変してみてください。

 

というわけで、Twitter経由で、ほどよい課題を見かけることができたおかげで、久しぶりにプログラミングを楽しめたのでした。

 

ちなみに、トーラスがひっくり返す、というのは、僕の大好きな Dimensions という動画の第8章の中に登場します。

youtu.be

 

「曲線が美しい立体折り紙(ブティック社 )」

 これまでに制作してきた、立体折り紙の型紙を収録した

「曲線が美しい立体折り紙」

が8月3日にブティック社より出版される運びとなりました。

 

曲線が美しい立体折り紙 (レディブティックシリーズ)

表紙に写っているような、立体的な折り紙26作品について、その型紙(展開図)と組み立ての工程が収録されています。

 

収録作品の多くは、これまでに出版してきた、次の3つの書籍の中で紹介してきた作品の再録となっていますが、見た目が美しく、それほど難易度が高くないものを選んでいます。その中のいくつかは本書に掲載する際に、一部手直しをしました。

ふしぎな 球体・立体折り紙

立体ふしぎ折り紙

立体折り紙アート

 

 

展開図をコピーして使うことを前提としているので、「ふしぎな球体・立体折り紙」と「立体不思議折り紙」のような用紙を切り離すタイプのものとは違って、何度でも制作にトライできます。

 

また、「立体折り紙アート」とは違って、収録されているすべての作品がカラーで綺麗な写真とともに、制作のプロセスが紹介されています。

 

というわけで、これまでに出版されてきたものとは少し性格が異なる感じになっていますので、今までとは違った層の方々にも手に取ってもらえたら、と思っています。

 

これまでの本の出版に際しては、私自身が撮影した写真が使われていましたが、今回はプロのカメラマンにすべて撮影していただきました。写真はすべてカラーで掲載されますので、とても綺麗に仕上がっています。

 

作品を紹介した口絵のページは、作品ごとに背景が設定されて、ものによっては小物と一緒に、ものによってはモノトーンで綺麗に、または、色の付いた用紙を使って色鮮やかに、さまざまな演出が施されています。写真集と言う位置づけでも楽しんでいただけるのではないかと思います。

 

折り工程の紹介は、私が実際に折っている様子を撮影していただいて、1つ1つの工程を明瞭な写真で説明しています。さすがはプロのお仕事、と感心しました。

 

今回のブティック社さんとのお仕事では、編集担当者さんに、とても親切に、そして熱意を持って対応いただきました。

 

これまでの本とは、また違った雰囲気で私の折り紙作品を世に出していただくことができ、嬉しく思っています。

 

 

曲線が美しい立体折り紙 (レディブティックシリーズ)

曲線が美しい立体折り紙 (レディブティックシリーズ)

 

 

JAIST(北陸先端科学技術大学院大学)訪問

博士論文審査の関係で、JAIST(北陸先端科学技術大学院大学)の上原隆平教授の研究室へ伺いました。

 

上原先生はアルゴリズムや計算量に関する研究を専門とし、折り紙やパズルに関する論文を多数発表されていることで有名です。パズルについては、JAIST内でパズルギャラリーを運営するほどの力の入れようで、2万点近くの収蔵品があるとか。今回、ギャラリーを初めて見せていただくとともに、そのバックヤードに収められたパズルの山に驚かされました。

 

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 こちらの写真はギャラリーの様子。とてもお洒落な外観だけでなくて、ギャラリーの空間を外側から中央に向けてギューと押し込むと(実際にはできませんが)、凹凸部分が互いに隙間なくはまり込んで、中身の詰まった直方体になるのだとか。

 

こだわりが伺えます。

 

下の写真は、チャイニーズリングという知恵の輪の仲間で、1つの輪を動かすのに1秒かかるとすると、解くのに1400年くらいかかるのだとか。

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 チャイニーズリングに関する説明はこちら

チャイニーズリング - Wikipedia

 

つくばエキスポセンター 企画展「3次元のかたち~作る技術、感じる技術~」撤収

つくばエキスポセンターにて開催されていた企画展

「3次元のかたち ~作る技術、感じる技術~」

が、本日最終日となりました。

 

 

この企画展では、筑波大学が後援となり、私は監修という立場で関わらせていただきました。企画が立ち上がったのは半年以上前の話となります。企画の検討から準備、展示、各種のワークショップを通して、科学館の裏側を知る、貴重な経験をさせていただくことができました。

約2か月半にわたる展示期間では、折り紙をメインに、立体物の構成、表現を扱った内容を、多くの来場者に触れていただけたのではないかと思います。

 

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最終日の本日は、愛知工業大学の宮本好信教授による、回転建立方式(RES)による、板材からのドーム形状立ち上げのデモも行われました(リンク)。

 

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今回は、アクリル板で作ったテンプレートに沿って折り筋をつけて、それを折ることで球体を作れるようにしました。最終日には、ミームデザイン学校での受講生たちも来てくださり、球体折紙をワイワイ楽しく体験してくれました。

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本日、夕方の撤収も無事に終わり、これで私の仕事は一区切りですが、学芸員のみなさんは、さっそく次の企画展に向けて動き始めています。

 

ご協力くださった皆様に、感謝いたします。

 

関連エントリ

つくばエキスポセンターでの企画展と学芸員さんの仕事 - みたにっき@はてな 

 

 

書籍紹介 「折り紙学」(西川誠司著)

 

 

折り紙学 起源から現代アートまで

日本折紙学会評議員の西川誠司氏による、「折り紙学」という書籍が出版されました。

 

大きな文字とたくさんの写真が掲載された大型本です。

本文は優しい文体で書かれていて、小学生などの子どもたちを対象としているように見えますが、その内容は、折り紙の歴史を紐解く、しっかりと地に足の付いた構成となっています。

 

日ごろ何気なく「折り紙は日本の文化」と思っているところに、冒頭から海外の折り紙アーティストの作品が大きく紹介されていることに、まず驚くことでしょう。

表紙の大きなゾウは、スイスの折り紙作家の作品です。

 

パート1では、日本の折り紙の起源として平安時代の「畳紙」、室町時代の「折形」を経て、江戸時代に開花した折り紙の文化が紹介されています。

その一方で、フランスの画家カロリュス・デュランの作品『喜び楽しむ人びと』(1870年)に、折り紙が描かれていることを紹介し、ヨーロッパで独自に発展したと思われる折り紙の文化についても触れています。

 

私たちの多くは、子どもの頃から折り紙に親しんでいますが、その歴史については、驚くほど何も知らないできたことを再確認させられます。

 

日本が誇る文化の1つであるからこそ、その歴史については正しい認識をもっている必要があるでしょう。

 

パート1の後半では、折った後の形と展開図の関係に関する考察、科学分野への応用など、さらに一歩進んだ内容が紹介されています。

 

そしてパート2にて、ようやく一般的な折り紙本に見られる折り図が登場します。

 

このように、他に類を見ない、「折り紙『学』」の書籍を、敢えて子ども向けの本として出版された背景には、日本折紙学会の評議員代表も務められた西川氏の、「このような本が存在しなくてはならない」という強い想いを感じます。

 

願わくば、一家に一冊、というように普及して欲しいものですが、まずは各小学校や図書館などに置かれて、多くの子どもたちに手に取って欲しいと思います。

 

 

折り紙学 起源から現代アートまで

折り紙学 起源から現代アートまで