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三谷純のブログ

紙模型用のモデリング

前回のエントリでは、ペーパークラフト用の展開図を作ることを前提とした、形状データの前処理について書きましたが、あくまでそれは「展開図を作るための最低条件」であって、ペーパークラフトを作って楽しむことを目的とすれば、形状データを作るときに気を付けることはまだまだ沢山あります。

紙模型については、私が博士課程の学生の頃から取り組んできたテーマの1つでもあるので、紙模型用の形状データを作るときの注意点などを、ちょっとまとめてみます。


■デフォルメした簡単な形にする
3DCGで形を作るハードルは次第に低くなる傾向にあるので、あちこち細部まで作りこんでしまいがちですが、それを実際に紙模型にしようとすると、パーツが小さすぎる、組み立てるのが難しすぎる、という問題が生じます。手軽に紙工作を楽しむには、適度な難易度とリアリティのバランスを取る必要があります。なるべく少ない面の集合で形を表現するように心がけるのがポイントになります。


■作れる形にする
当たり前のことですが、空中に浮いたパーツが無いようにする、互いに交差する面が無いようにする、という点の確認が事前に必要です。2足で直立するロボットなどを作る場合は、本当に直立するのかバランスを意識することも必要になります。また、大きなパーツを細いパーツで支えていないか、など強度に関する配慮も必要になります。


■組み立てるときのことを考える
完全に閉じた球体を作ろうとすると、最後に閉じるときに内側から手で押さえられなくなります。組み立てるときに手を入れる空間の確保なども意識すると、格段に組み立てやすくなります。貼り合わせの仕方(のりしろの配置の仕方)まで考慮できれば、組み立ての手間が大きく異なります。


■曲面は可展面で構成する
柱面、錐面、接線曲面は可展面と呼ばれ、1枚の紙から作れる曲面です。これらをうまく使うと、滑らかな曲面を持った紙模型を作れます。


■その他
展開図の配置の仕方によっても、スムーズに組み立てられるかどうかに影響します。例えば、左右対称な形の場合は展開図も左右対称に配置すべきでしょう。人体の模型の場合は、展開図も上から順番に配置されているとパーツを探す手間を減らせます。また、キャラクターの顔のような場合、どうしても切り込みを入れたくない場所があったりします。仕上がりを考えながら展開図を作ることも必要です。

また、素材によっては、その厚さを考慮する必要が生じる場合があります。しかし、素材の厚さを考慮して形を設計するのは実は結構難しい問題で、厚さをどのように逃がすかによって同じ形を表現するにも展開図が異なってきます。


他にもいろいろ注意すべき点がありそうですが、とりあえずパッと思いついたのはこんな感じ。
次のステップとして「わかりやすい組み立て説明書の作成」など挙げれば、まだまだ考えることはたくさんありそうです。
「紙工作」と言えば簡単そうですが、つきつめて考えれば、奥が深いテーマのひとつではあります。