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みたにっき@はてな

三谷純のブログ

共同研究と、「折り紙は高くつく」という話

今日は遠方よりお越しいただいた企業さまと、共同研究について話をさせていただきました。

大学の台所事情が厳しい昨今、企業との共同研究による研究予算の獲得が、これまでにも増して重要となってきています。

アメリカの大学では、数億円と言う単位で企業からの研究費を受け入れるケースが多々見られる、という話を聞きますが、日本ではまだまだ、そのような事例は少ないです。

(数億円と言う単位になるときは、個人ではなくて組織として受け入れる場合が多いようです。日本では、大阪大学と中外製薬の包括連携契約締結(10年間で100億円)が話題になりました)

 

私自身、いろいろな企業さまからのコンタクトをいただくのですが、そこには、なかなか一筋縄ではいかない課題があったりもします。

今日はそのことについて書いてみたいと思います。

 

まず、大学での研究と言うのは、(少なくとも私のところでは)学生が主体的になって手を動かして研究をします。とくに私の所属する筑波大学コンピュータサイエンス専攻ではソフトウェアの研究開発がメインですから、企業様からも、製品開発に役に立つソフトウェアの提供を期待されることが多いです。

しかしながら、「わが社はこういうソフトウェアが欲しい」という要望があって、それに対して、「では開発しましょう」というのでは、民間のソフトウェア会社と変わらないことになってしまいます。

大学で共同研究という形で引き受けるからには、今までにないチャレンジングなものでないと、研究として取り組む意味がなくなってしまいます。

それでは、ということで難しいテーマをご提案いただくと、今度は責任をもって実現できる保証が持てない、という申し訳ない状況になってしまいます。実際に手を動かして開発を行うのは研究室に所属している学生なので、ますます私の口から「できます」という約束が難しくなります。学生は決してプログラム開発の専門家ではなく、また個人によって能力が大きく異なります。たとえ優秀な学生であっても1年、または2年か3年で卒業していくことになります。

企業が社内で挑戦するよりも、大学生(大学院生)に挑戦してもらった方がよさそうなテーマ(CGや折り紙に関するもの)、というものが、ちょうど見つかるといいのですが、それはそう簡単なことではありません。

 

ところで、私自身は折り紙の研究をしていますので、折り紙の技術を活用したい、という問い合わせも多くいただきます。大変ありがたいことですが、でも、残念ながら共同研究契約まで行くことは少ないです。 

よくあるすれ違いは、折り紙の技術に対して過大な期待を持たれてしまっているケースです。「わが社の製品をコンパクトに折りたたむ方法を考えて欲しい」「この製品を折り紙で安価に作れるようにしたい」、それ以外にも、折り紙の技術を魔法のように期待されるケースが多く、「それは難しいです」と答えざるを得ない場合が少なくありません。

とくに「折り紙は安い」と考えて、コストダウンにつながることを期待される方が多いですが、実は折り紙はとても高くつく技術です。

ここは大事なので、もう一度書きます。折り紙は高くつく技術です。

直方体のシンプルな箱でさえも、人が手で折って組み立てることが多いので、ましてや少し複雑な折りを含むものになると、必ず1つずつ時間をかけて折る作業が発生します。数十円単位でコストを考えないといけないものには、「折る」という工程は割に合わないのです。

お話を伺うと「それはプラスチックの射出成型の方がよいのでは」というものも多く、最終的にはお断りすることになってしまいます。

 

折り紙の技術(とくに私が行っている折り紙デザインの技術)と相性のよいものは、1つ1つの単価が上がってもよいような、意匠性を重視したもの、ということになるでしょう。

ISSAY MIYAKEとの共同研究では、意匠性に優れたデザインの服(132 5シリーズ)の立ち上げに関わらせていただきました。また、共同研究の事例ではないですが、下の写真のように、子供たちが靴を脱いで上がれる大きなオブジェに折り紙のデザインを活用いただいたことがあります(写真右提供:磯崎新+胡倩工作室)。これは、上海の高島屋の絵本館においていただいているもので、中にウレタンが入っていますが、不要な時にはカバー部分を外して巻き取って収納できます。

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このように、うまくいった事例の方が少ないのが実情ですが、折り紙の特性を活かした新しい提案ができればと願っています。

 

本日、お越しいただいた企業さまは、このようなことを十分に説明しましたが、それを理解くださったうえで、それでもぜひ、と共同研究のお申し出をくださいました。

「研究」ですので、うまくいくか不透明なところがありますが、お役に立てるよう頑張って行きたいと思います。