みたにっき@はてな

三谷純のブログ

折り紙アーティストの紹介

2017年3月にTuttle Publishingから出版された洋書「New Expression in Origami Art」では、現代の折り紙アーティスト25名が紹介されています。

 

New Expressions in Origami Art: Masterworks from 25 Leading Paper Artists

New Expressions in Origami Art: Masterworks from 25 Leading Paper Artists

 

 

各アーティストについて、それぞれ8ページずつが割かれ、プロフィール写真と、代表的な作品写真が多数掲載され、ページをめくるだけで十分に楽しめます。

ハードカバーで重量感があり、綺麗な作品写真がたくさん掲載されているので、書棚に並べておくだけでお洒落な雰囲気となりそうです。

 

 

このたび、この書籍の書評を日本折紙学会の機関誌に寄稿することになったので、改めてパラパラと見ているところですが、せっかくなので、ここでも少し内容を紹介したいと思います。

 

本書で紹介されているのは、次の25名です(掲載順)。

Joel Cooper, Erik Demaine and Martin Demaine, Giang Dinh, Vincent Floderer, Tomoko Fuse★, Miri Golan, Paul Jackson, Beth Johnson, Eric Joisel, Goran Konjevod, Michael G. Lafosse and Richard L. Alexander, Robert J. Lang, Sipho Mabona, Mademoiselle Maurice, Linda Tomoko Mihara, Jun Mitani★, Jeannine Mosely, Yuko Nishimura★, Bernie Peyton, Hoang Tien Quyet, Matt Shlian, Richard Sweeney, Jiangmei Wu

★記号を付けたのが日本人で、布施知子さん、西村優子さん、私の3名が紹介されています。

 

私の作品は、下の写真のような感じで掲載いただきました。綺麗なカラー写真で掲載してもらえるのは嬉しいものです。

 

f:id:JunMitani:20170422170325j:plain

 

この書籍で紹介されているアーティストは、どなたも優れた作品を発表し、世界で活躍されている方々ですが、その中で私が実際に面識があり、作風を詳しく知っている方をピックアップして紹介してみたいと思います。

 

 

Erik Demaine and Martin Demaine

http://erikdemaine.org/curved/

MITで教鞭をとっている、天才数学者のErikさんと、そのお父さんのMartinさん。もはや折り紙設計を超越して、紙の物理的な特性で得られるグニャグニャとした造形をErikさんが作り、お父さんのMartinさんがガラス細工に閉じ込めるという、斬新なスタイルの作品を多数作っています。グニャグニャの造形自体は、ごくごくシンプルな曲線の折り筋から作り出されています。

Erikさんを詳しく知るには、次の記事がおススメです。

朝日新聞グローブ (GLOBE)|数学という力 Power of Mathematics -- 折って1回切るだけで…

ErikさんとMartinさんのお二人は、昨年に筑波大学にも遊びに来てくれました。今年の夏には、東京大学で開催される Asian Forum on Graphic Science という国際会議に招待講演で来られる予定になっています。世界中で引っ張りだこです。

折り紙の研究をするには、Erikさんの「幾何的な折りアルゴリズム―リンケージ、折り紙、多面体」という著書は必読です。

 

 

Tomoko Fuse

日本を代表する、世界的に活躍されている折り紙作家で、数多くの書籍を出版されています(Amazon では71件ヒットしましたが、もっとたくさん書かれていると思います)。ボックスやユニット折りなど、幾何学的な造形が得意で、世界中にファンがたくさんいます。4OSMEのときに、シンガポールでご一緒し、一昨年はイタリアでの折り紙コンベンションに一緒に招待されて、たくさん話をさせていただきました。世界を飛び回って展示会や講演をされていて、世界で一番知られている折り紙作家の一人と言えるでしょう。

 

Miri Golan

http://www.origami.co.il/

イスラエルの折り紙センターを運営し、折り紙の啓もう普及に絶大な情熱を注いでいる折り紙作家です。イスラム教とユダヤ教の経典を結ぶような折り紙作品を作るなど、折り紙が世界に平和をもたらすという信念をもって活動されています。また、幼児教育や数学の初等幾何の教材に折り紙を活用するための活動にも取り組んでいます。イスラエルの折り紙コンベンションに招待いただいた時に、およそ1週間お世話になり、ずーっとずーっと、折り紙に対する情熱を語っていただきました。

 

Paul Jackson

http://www.origami-artist.com/org_abstracts.htm

Miri Golan さんと夫婦で折紙活動をされています。平織りでの有機的な造形が得意ですが、ジャンルを選ばず幅広い作品を発表されています。大学でデザインに関する授業を多数持っています。イスラエル滞在中に、あちこちの大学に連れて行っていただきました。死海やエルサレムにも連れて行ってもらったのも良い思い出です。ポールジャクソンさんの書籍「デザイナーのための折りのテクニック」の翻訳の監修をさせていただいたご縁で、いろいろ親しくしていただいています。

 

デザイナーのための折りのテクニック 平面から立体へ

 

Robert J. Lang

http://www.langorigami.com/

折り紙界のスーパーマンです。折紙設計理論を確立し、TreeMakerという設計ソフトウェアを開発されています。そのソフトウェアを用いて作り出された精密な昆虫の折り紙は、少し離れると本物と区別できないほどです。見事な折り紙作品を多数発表される傍ら、論文、著書を執筆し、あちこちで講演して、大学での講義もこなし、そのバイタリティーには驚かされます。米国のアメリカ団体でも重要なポジションにいて、いろいろな啓もう活動をされています。日本にも頻繁に来られています。ラングさんの著書

Origami Design Secrets: Mathematical Methods for an Ancient Art, Second Edition

は、折り紙の設計理論に興味がある方には必読の書です。

 

 

Yuko Nishimura

http://www.yukonishimura.com/

下の写真は、上記のWebページで紹介されている西村さんの作品です。多数のプリーツから成る、陰影が繊細で美しい幾何学折り紙を得意とするアーティストで、筑波大学出身です。折り形デザイン研究所で活躍されています。茶室の空間造形に、折り紙の構造を取り入れるなど、日本の文化の新しい表現を試みたりされています。

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Bernie Peyton

http://berniepeyton.com/

野生動物の研究をされている方で、作品は、その経験に基づいた、生き生きとした動物たちがメインとなっています。台湾で開催された Origami Universe という世界最大規模の折り紙展示を成功に導いた立役者です。イタリアのコンベンションの招待者としてご一緒しました。ユーモアのある方で、楽しい話をたくさん聞かせていただきました。

 

以上、私とお付き合いのある方、というかなり偏った紹介の仕方をしましたので、他の方についても、インターネットで名前を検索すると、素敵な折紙作品がたくさん見つかると思います。

 

日本国内で活躍されている折り紙作家の紹介が、日本折紙学会内の、こちらのページにあります。

http://www.origamihouse.jp/works/harmo/profile/profile-domestic.html

また、上記以外にも、海外の折り紙作家についての紹介がこちらのページにあります。

http://www.origamihouse.jp/works/harmo/profile/profile-world.html

 

著名な折り紙作家の作品を自分でも折ってみたいという場合には、「端正な折り紙」山口真著(ナツメ社)がおススメです。タイトルの通り、端正な折り紙作品の作り方が、わかりやすい折り図で紹介されています。 

端正な折り紙

端正な折り紙