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三谷純のブログ

書籍紹介 「折り紙学」(西川誠司著)

 

 

折り紙学 起源から現代アートまで

日本折紙学会評議員の西川誠司氏による、「折り紙学」という書籍が出版されました。

 

大きな文字とたくさんの写真が掲載された大型本です。

本文は優しい文体で書かれていて、小学生などの子どもたちを対象としているように見えますが、その内容は、折り紙の歴史を紐解く、しっかりと地に足の付いた構成となっています。

 

日ごろ何気なく「折り紙は日本の文化」と思っているところに、冒頭から海外の折り紙アーティストの作品が大きく紹介されていることに、まず驚くことでしょう。

表紙の大きなゾウは、スイスの折り紙作家の作品です。

 

パート1では、日本の折り紙の起源として平安時代の「畳紙」、室町時代の「折形」を経て、江戸時代に開花した折り紙の文化が紹介されています。

その一方で、フランスの画家カロリュス・デュランの作品『喜び楽しむ人びと』(1870年)に、折り紙が描かれていることを紹介し、ヨーロッパで独自に発展したと思われる折り紙の文化についても触れています。

 

私たちの多くは、子どもの頃から折り紙に親しんでいますが、その歴史については、驚くほど何も知らないできたことを再確認させられます。

 

日本が誇る文化の1つであるからこそ、その歴史については正しい認識をもっている必要があるでしょう。

 

パート1の後半では、折った後の形と展開図の関係に関する考察、科学分野への応用など、さらに一歩進んだ内容が紹介されています。

 

そしてパート2にて、ようやく一般的な折り紙本に見られる折り図が登場します。

 

このように、他に類を見ない、「折り紙『学』」の書籍を、敢えて子ども向けの本として出版された背景には、日本折紙学会の評議員代表も務められた西川氏の、「このような本が存在しなくてはならない」という強い想いを感じます。

 

願わくば、一家に一冊、というように普及して欲しいものですが、まずは各小学校や図書館などに置かれて、多くの子どもたちに手に取って欲しいと思います。

 

 

折り紙学 起源から現代アートまで

折り紙学 起源から現代アートまで