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三谷純のブログ

クリスト・ヴラディミロフ・ヤヴァシェフ氏のThe London Mastaba

膨大な数のドラム缶を積み上げたクリスト・ヴラディミロフ・ヤヴァシェフ氏の作品「The London Mastaba」が完成したとのニュースに触れて、とても感慨深く思ったので、そのことについて書いてみたいと思います。

 

www.afpbb.com

 

クリスト氏の壮大なスケールの作品の存在を知って、なんだこれは!? と、大きな衝撃を受けたのが、今から10年くらい前のことになります。

いろいろなものを布で包み込む「梱包」を一連の作品としていて、日用品を包んだ作品が次第にスケールアップし、ついには建物、橋と言った巨大なものを包んだ作品が登場するようになります。はては、ロッキー山脈の谷にカーテンを張るとか、島を布で囲うようにするとか、常人では思いもつかないことを実現しています。

 

詳しくは、直接クリスト氏のWebページを見たり、Wikipediaで見たりするとよいでしょう。

christojeanneclaude.net

クリスト - Wikipedia

 

そして、今からちょうど一年前に、東京ミッドタウン 21_21 DESIGN SIGHT で開催された
「そこまでやるか 壮大なプロジェクト展」

21_21 DESIGN SIGHT | 「『そこまでやるか』壮大なプロジェクト展」 | 開催概要

に行ったときに、そこでクリスト氏のコンセプトをビデオ映像を通してじっくり観ることができました。

 

スケールが巨大な作品でありながら、どれも存続するのは短期間で、一見するととても無駄なことのように感じ、いったいその費用はどのように捻出しているのか気になりましたが、制作費はすべて、クリスト氏の絵画を売ることで賄っているとのことでした。その絵画は、これから作りたい巨大オブジェの完成予想図であるというのが、とてもユニークなところです。ある意味、絵画を通してスポンサーを募っているわけです。

 

当然、「なぜこんな巨大なものを作るのか?」という疑問がわくわけですが、インタビューでの質問に「なぜなら自分がそれを見てみたいから」と回答していたことが、とても強く印象に残っています。

 

そのビデオ映像の中で、ドラム缶を積み上げた巨大なオブジェを作りたい、ということを話していたのですが、今回のニュースを通じて、それがついに実現したことを知りました。情熱というよりも、もはや執念のようなものを感じます。

 

美術館を包んだ作品だったり、今回のドラム缶のオブジェだったり、あまりに巨大なものは、コンピュータグラフィックスで十分にリアルに再現できると思うのですが、それでもやっぱり、実物を作り、実際にその場で見ることで、初めて感じることができる何かがあるのです。