みたにっき@はてな

三谷純のブログ

文化交流使(16日目:ペナン)

1を4つ並べて正方形(折り紙の形)が作れることから11月11日の今日は「折り紙の日」です(10月24日から11月11日をWorld Origami Days としようという働きかけもされています)。

そのようなわけで、ここマレーシアでは、マレーシア折り紙協会の創設者であり、マレーシア折り紙アカデミーの代表でもある Kennethさんによって、近くのモールで折り紙の日記念イベントが開催されました。私も招待いただき、現地の折り紙愛好家による作品と一緒に、私の折り紙作品も展示させていただきました。

決して規模の大きなイベントではありませんでしたが、マレーシア観光・芸術文化省事務次官日本大使館広報文化部長、国際交流基金クアラルンプール日本文化センター所長などが招待され、複数のメディアからの取材もあり、マレーシア折り紙協会の存在を十分にアピールするものとなっていました。Kennethさんの、この見事な計画とその実行力には大いに感心しました。

 

話が脱線しますが、国際交流基金クアラルンプール日本文化センター所長とは、2014年にイスラエルを訪問した際にも現地の国際交流基金の職員としてお会いしたことがありました。筑波大学出身だそうです。奇遇にも、5年越しに再び今度はマレーシアでお会いできたことに驚かされました。これもご縁なのでしょう。

 

さて、このようなイベントが済んで、今夜は21時のフライトでペナンに向かいます。ペナンには22時着の予定。なかなかにハードです。

 

今、搭乗待ちで時間があるので、これ以降で、今日ちょっと思ったことを書いてみたいと思います。

 

文化交流使の話を伺った当初から、各国を回って日本の折り紙を伝えるような役割を、私のようなものが引き受けていいのか、という不安が常にありました。それは実際に派遣が始まってから2週間ほど経っても変わらず、もっと日本の折り紙の歴史に詳しく、それなりのお立場で、しっかり折り紙というものを伝えられる人が相応しいのではないかとずっと思っていました。服装に関しても、私は普通のシャツで話をしていますが、もっと伝統的な和装で臨むべきではないかと思ったりもしていました。

だけど、香港、フィリピン、マレーシアと回ってきて、ちょっと考えが変わりました。勝手な思い込みかもしれないですが、あ、僕が引き受けてよかったかもしれない。と思えるようになったのです。

それは、一言でいうと、「折り紙は、現在進行形の文化だから」ということです。無形文化遺産と言われるもののように、古くからの衣装や所作を、そっくりそのまま今の時代まで正確に引き継ぐことが重視される古典文化とは違い、折り紙は時代とともに変化し、進化しています。とくに1980年代に、折り紙設計のアイデアが普及してからは、鶴や兜のような伝承折り紙とは、まったく次元の違う折り紙の世界が登場しました。

このような新しい時代の折り紙は、インターネットを通じて世界各国に一気に広がりました。

そのようななか、各地の折り紙愛好家の手によってコミュニティが作られ、意見交換や交流がもたれ、互いに発展していく中で、それでもなお、日本の折り紙は、そのレベルの高さや愛好家層の厚さで世界から一目置かれています。これまでにお会いした愛好家の方々は、みなそろって日本の折り紙のレベルの高さや新しさを讃えます。それは過去の伝承折り紙ではなくて、現在の日本の折り紙に対してなのです。

そのようななか、日本から来た文化交流使が、わざわざ伝統的な鶴や兜の折り紙を紹介してもしかたがないのではないか。とも、思うようになりました。

世界の日本に友好的な方々は、もう折り紙は知っています。鶴も作ったことがあります。大使館の方々も、鶴の作り方なら自分たちでも教えてきた。と言っています。

そんな時代だからこそ、常に変化して、従来の折り紙の概念にとらわれない、数学やコンピュータやカッティングプロッタを使って作った、なんだか変で新しい折り紙を、今の日本の折り紙の一例として紹介することには、きっと意味があるのだろうと思うようになりました。

そんなわけで、今後はもうちょっと胸をはって、自信を持って頑張っていこうと思っています。