本日放映されたすイエんサーのテーマは
今回、ほんの少しだけ(全部で10秒くらい??)出演させていただいたので、差し支えのない範囲で、その裏舞台の話を書いてみます。
リンゴをクルクル回しながら皮をむいていくと、ひとつながりの長い帯の形になります。
これを平らに置くと、下の写真のような、2つの渦巻きがつながったような形(短い場合はアルファベットのS字のような形)になることが番組で紹介されていました。
すイエんサーの番組では
「皮を途切れさせることなく、このような形にむくには、どのようにすればよいか。」
という内容が紹介されていましたが、当初は
「どうしてこのような形になるのか?」
という問い合わせを番組関係者の方からいただきました。
むむむ。
なぜこのような形になるのでしょう??
言葉でわかりやすく説明しようとすると、次のような感じになるでしょうか。
リンゴの北極相当の場所から「時計回り」に皮をむきはじめて、最後に南極に到達するまでむき進めるとする。
さて、これをひっくり返して南極から眺めてみると「反時計回り」になっている。
北半球と南半球で、回転の方向が反対なので、リンゴの皮の展開図の両端には逆向きの渦が現れる。
これが中央でつながるのだから、結果としてS字型になる。
これを厳密に述べようとすると、ちょっと難しい問題で、Webで検索したところ、数学的な考察を書いた次のようなページがありました。
リンゴの皮の螺旋とクロソイド曲線の関係 - DaiiusDiscipulusの日記
上記のページでは、りんごの皮をむく時の経路を球面上の螺旋として次の式で表し、
これを平面上に移した時の曲率が次式で表されると述べています(aは回転数)。
ここでa→∞とすることで、
となるので、中央にあたるtがπ/2のときに曲率がゼロになり、その前後で曲率の符号が反転することがわかります。
以上から、皮は最初に渦を巻いた方向と、途中から向きが変わって逆向きの渦を描くことが数学的にも正しいと言えそうです。
さて、別の方法として、球面を多面体で近似して、その展開図を観察することが考えられます。
こちらの方が私の好きなアプローチです。
例えば、下図のような多面体で球を近似的に表現するとします。
この多面体の展開図は、構成面を並べることで得られるので、うまく並べると下図のような展開図が得られます。
極の近くから次第に円弧が広がり、赤道付近は真っ直ぐになります。
これが反対側も同様になるので、結果としてS字型になることを確認できます。
もう少し、リンゴの皮むきの様子を再現したモデルを次のように作成しました。
細長い三角形の列(triangle strip)で曲面を近似しています。
これを展開すると、下図のように、それっぽい形が得られました。(ペパクラデザイナーを使用)
リンゴの皮は包丁でむくので、triangle stripで近似するのも、あながち間違っていないように思います。
こうやって見てみると、やっぱりリンゴの皮は逆向きの渦が2つくっついた状態になることを見てとれます。
さらに、皮むきの様子をアニメーション表示してみました。
ここまでくると、単なる趣味の領域。
さて、番組の最後には次のような、すイエんサーのロゴが配置されたサイコロの展開図が登場しました。
↑これを組み立てると、立方体になるのです。
「何か最後に面白い展開図は無いか」と相談されて、提供したものです。
立体の展開図は、その作り方によって、いろいろな形を取り得るということをメッセージとして伝えたかったのです。
ちなみに、立方体を細長い1本の展開図にしようということは考えていたのですが、図のようなジグザグの形にするアイデアは僕と同い年の中野圭介氏が教えてくれました。感謝です。