みたにっき@はてな

三谷純のブログ

3Dプリント用肝臓のフレームモデル

筑波大学の医学系の先生方と共同で、主に肝臓手術の支援を対象としたプロジェクトを進めています。

「3D-CG バーチャル手術シミュレーションユーニット http://u-tsukuba-vrsurg.jp/


私の担当範囲では、手術シミュレーションのためのソフトウェア開発などを目指していますが、それ以外にも多くの先生方と共同で多岐に渡る研究に取り組んでいます。


その中の一つの成果として、
「安価で、内部構造が見易い臓器立体模型を3Dプリンターで作製する手法」
について7月8日に記者発表する運びとなりました。
http://u-tsukuba-vrsurg.jp/news1/1136.html


大日本印刷さんと一緒に進めてきたので、詳しくは
大日本印刷のプレスリリース http://www.dnp.co.jp/news/10112404_2482.html
でご覧いただけます。


簡単に言ってしまうと、下の写真のような肝臓の内部を表した模型を3Dプリンタで出力するサービスの実現を目指しています。というものです。


肝臓内部には血管が複雑に広がっているので、この内部を理解するためにCT画像から3DCG表示したり、下の写真のような透過模型を作ったりするのが従来のアプローチでした。

これはこれで便利なのですが、何しろ高価である、という点が大きなネックになっていて、手術の度に制作するわけにもいかないという問題がありました。また、透過樹脂を使っているとは言え、奥の方は見えにくいとか、表面の屈折で歪んで見える、表面の光沢で見にくい場所がある、などの欠点もありました。


これを何とかしよう。ということで考え出したのが、肝臓実質は出力せずに、表面にフレーム構造を配置するだけのものだったわけです。


価格を下げることが第一の目的でしたが、作ってみたところ、「透過樹脂製よりも、むしろ血管が見やすくていい。」という副次的な効果が大きく、医学系の先生には高い評価をいただくことができました。
さらに、フレーム構造は内部の血管の繊細な構造を守るという機能もあります。

フレームが無ければ、もっと安価にできますが、フレームには
・肝臓の外形を把握できるようにする
・血管部を保護する
という2つの機能があるのです。


フレーム構造の決定までには試行錯誤がありましたが、最終的な案は研究室の修士2年の江 健太郎君が作成してくれました。江君はCGで綺麗な絵を作るのが得意で、下のようなレンダリングもしてくれました(実際はコストの関係で色を付けることはしません)。


技術的な新規性は乏しいのですが、多くの方と話をしていくなかで、これまでとは異なる発想のアプローチを見出すことができました。


今回の記者発表を受けて、多くのメディアで取り上げていただけました。


日刊工業新聞
http://www.nikkan.co.jp/news/nkx0720150709eaai.html

・産経ニュース
http://www.sankei.com/region/news/150709/rgn1507090054-n1.html

共同通信社リソース
http://www.chunichi.co.jp/s/article/2015070801001639.html


今後、実用化に結び付けることができれば嬉しいです。