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みたにっき@はてな

三谷純のブログ

「REALITY LAB――再生・再創造」展

東京ミッドタウンにある 21_21 DESIGN SIGHTというギャラリーにて、11月16日から12月26日までの期間、折り紙作品およびそれに関する映像の展示をさせていただくことになりました。21_21 DESIGN SIGHT には、これまでに何回か展示を見に行ったことがありましたが、このような素晴らしい場所で展示を行わせていただける機会が訪れようとは思ってもみなかったことで、今現在、まさに身が引き締まる想いで準備を進めさせていただいています。これまでにお世話になった方、そして今、準備のためにご尽力いただいている多くの方に、この場を借りて感謝申し上げます。


今回の展示会は「REALITY LAB――再生・再創造」展という企画展で、全部で8件の展示作品があり、その中には三宅一生氏による新作の衣服の展示もあります。


今回の三宅一生氏による新しい衣服のデザインにおいては、その基本パターンに折り紙の幾何学が活用されている点に大きな特徴があります。その企画段階において、私がこれまでに行ってきた、コンピュータを用いた展開図パターンの生成という点で、一緒にプロジェクトに関わらせていただきました。このことが、今回の展示会に参加させていただけるきっかけとなりました。


折り紙というと、一般的には鶴や兜などが想像されると思いますが、多くの先人による幾何学的側面からの研究により、最近では1枚の紙から作れる形に関する知識が深まってきました。特にコンピュータが普及した現代では、特定のアルゴリズムで生成可能な形については、ソフトウェアを開発することで、様々なバリエーションを瞬時に生み出すことができるようになりました。


私は、下の写真のような軸対称な形を1枚の紙で作りだすための展開図をコンピュータで自動生成できるようにし、入力に応じて曲面を持つ形も含む、立体的な形を様々に作り出せるようにしました。

汎用的な設計になっているため、入力によっては、和菓子の箱やタトウと呼ばれる包み紙に見られるパターン、Jeff Beynon氏による「びゅんびゅんバネ」と呼ばれる作品に見られるパターン、蛇腹折りのパターンなども生み出すことができます。
このようなシステムをおよそ2年前に開発し、入力を様々に試行して、面白いと思う形を実際に作成し、その写真をWebで公開してきました。それらの多くはこちらのサイトから見ることができます。この活動がリアリティラボプロジェクトチームの目にとまり、折り紙の幾何学を活かした服の開発に私のツールを提供させていただくことになりました。


今回の衣服のデザインの中には、下の図に示すようなパターンが使用されたものがあります。

これは、折り紙アーティストである布施知子氏、および工学研究家である野島武敏先生によって研究されてきた形で、それぞれ「ねじれ多重塔」、および「円錐殻」という名称で呼ばれているパターンの一種です。このパターンには、平坦に折りたためるという特徴があり、ねじれの角度や重ねる段数を変えることで、印象の異なる造形が生まれます。私が開発したソフトウェアには、布施知子氏に教示いただいたパターン生成法を組み込ませていただいており、それが今回の衣服のパターンにも活用されました(この場を借りて、布施知子氏に感謝申し上げます)。そのパターンから生まれた衣服の造形の美しさから、今回の企画展では1つの代表的な作品として扱われています。同じアルゴリズムでも、パラメータを変えることで、下のような写真の造形も可能になります。


折り紙の幾何学に関する研究の分野では、普段私たちがあまり目にすることの無い、様々な紙の折りたたみパターンが知られており、その造形美や構造の面白さには、まだまだ多くの可能性が秘められています。
しかし、実際にそのパターンを製品として活用するうえでは、製造方法やコスト、耐久性など製品としての品質を確保しないとならないなど、多くの問題が存在します。今回、素材選びから加工法に至るまで膨大な回数の試行を行い、直面する多くの問題を克服し、最終的に我々が衣服として身にまとうことができるものとして完成度を高めてきた、リアリティラボプロジェクトチームの方々には頭が下がる思いです。身にまとう方法や、折りたたんだ後の見栄え、ベルトなどの小物のデザインに至る細部まで注意が払われています。実際に身にまとった後に現れる形は、折りたたまれた状態からは、なかなか想像できないものであり、その変形の妙に驚かされます。展示会の会場には、構造の異なる折り紙の幾何を活用した衣服が複数展示されるそうですので、是非実物をご覧いただければと思います。


世代を超えて、多くの人たちに親しまれている「折り紙」の技術が、三宅一生という一流のデザイナの手によって、素晴らしい衣服のデザインに活かされたことは、とても喜ばしいことだと思います。
私はソフトウェアの開発という形で、折り紙のパターン生成の試行錯誤を効率化することに貢献させていただきましたが、折り紙の技術と衣服のデザインの橋渡しとして少しでもお役に立てたのであれば、有難いことだと思います。それ以外の点は、他のたくさんの方々の努力によってなされたものです。
ここに至るまでの間、折り紙に関わる多くの方々に多大なるお力添えをいただきました。改めて感謝申し上げます。