みたにっき@はてな

三谷純のブログ

つくば市近辺の穴場スポット:上高津貝塚ふるさと歴史の広場

つくば市の境界にほど近い場所にある、土浦市の「上高津貝塚ふるさと歴史の広場」がかなりの穴場です。

 

上高津貝塚ふるさと歴史の広場 | 土浦市公式ホームページ

 

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とにかく何もない広大な広場が、休日でもほとんど人がいない状態。

キャッチボールをしても、サッカーボールを蹴っても、凧揚げをしても、他人に迷惑をかけることをほとんど気にしなくてすみます。

 

広場の端の方に、復元された竪穴住居が3つあって、中に入ることもできます。

 

併設されている考古資料館の入館料は大人が105円で、子供が50円。

 

お近くの方には、オススメです。

 

本当に、何もないけど。

折り紙アーティストの紹介

2017年3月にTuttle Publishingから出版された洋書「New Expression in Origami Art」では、現代の折り紙アーティスト25名が紹介されています。

 

New Expressions in Origami Art: Masterworks from 25 Leading Paper Artists

New Expressions in Origami Art: Masterworks from 25 Leading Paper Artists

 

 

各アーティストについて、それぞれ8ページずつが割かれ、プロフィール写真と、代表的な作品写真が多数掲載され、ページをめくるだけで十分に楽しめます。

ハードカバーで重量感があり、綺麗な作品写真がたくさん掲載されているので、書棚に並べておくだけでお洒落な雰囲気となりそうです。

 

 

このたび、この書籍の書評を日本折紙学会の機関誌に寄稿することになったので、改めてパラパラと見ているところですが、せっかくなので、ここでも少し内容を紹介したいと思います。

 

本書で紹介されているのは、次の25名です(掲載順)。

Joel Cooper, Erik Demaine and Martin Demaine, Giang Dinh, Vincent Floderer, Tomoko Fuse★, Miri Golan, Paul Jackson, Beth Johnson, Eric Joisel, Goran Konjevod, Michael G. Lafosse and Richard L. Alexander, Robert J. Lang, Sipho Mabona, Mademoiselle Maurice, Linda Tomoko Mihara, Jun Mitani★, Jeannine Mosely, Yuko Nishimura★, Bernie Peyton, Hoang Tien Quyet, Matt Shlian, Richard Sweeney, Jiangmei Wu

★記号を付けたのが日本人で、布施知子さん、西村優子さん、私の3名が紹介されています。

 

私の作品は、下の写真のような感じで掲載いただきました。綺麗なカラー写真で掲載してもらえるのは嬉しいものです。

 

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この書籍で紹介されているアーティストは、どなたも優れた作品を発表し、世界で活躍されている方々ですが、その中で私が実際に面識があり、作風を詳しく知っている方をピックアップして紹介してみたいと思います。

 

 

Erik Demaine and Martin Demaine

http://erikdemaine.org/curved/

MITで教鞭をとっている、天才数学者のErikさんと、そのお父さんのMartinさん。もはや折り紙設計を超越して、紙の物理的な特性で得られるグニャグニャとした造形をErikさんが作り、お父さんのMartinさんがガラス細工に閉じ込めるという、斬新なスタイルの作品を多数作っています。グニャグニャの造形自体は、ごくごくシンプルな曲線の折り筋から作り出されています。

Erikさんを詳しく知るには、次の記事がおススメです。

朝日新聞グローブ (GLOBE)|数学という力 Power of Mathematics -- 折って1回切るだけで…

ErikさんとMartinさんのお二人は、昨年に筑波大学にも遊びに来てくれました。今年の夏には、東京大学で開催される Asian Forum on Graphic Science という国際会議に招待講演で来られる予定になっています。世界中で引っ張りだこです。

折り紙の研究をするには、Erikさんの「幾何的な折りアルゴリズム―リンケージ、折り紙、多面体」という著書は必読です。

 

 

Tomoko Fuse

日本を代表する、世界的に活躍されている折り紙作家で、数多くの書籍を出版されています(Amazon では71件ヒットしましたが、もっとたくさん書かれていると思います)。ボックスやユニット折りなど、幾何学的な造形が得意で、世界中にファンがたくさんいます。4OSMEのときに、シンガポールでご一緒し、一昨年はイタリアでの折り紙コンベンションに一緒に招待されて、たくさん話をさせていただきました。世界を飛び回って展示会や講演をされていて、世界で一番知られている折り紙作家の一人と言えるでしょう。

 

Miri Golan

http://www.origami.co.il/

イスラエルの折り紙センターを運営し、折り紙の啓もう普及に絶大な情熱を注いでいる折り紙作家です。イスラム教とユダヤ教の経典を結ぶような折り紙作品を作るなど、折り紙が世界に平和をもたらすという信念をもって活動されています。また、幼児教育や数学の初等幾何の教材に折り紙を活用するための活動にも取り組んでいます。イスラエルの折り紙コンベンションに招待いただいた時に、およそ1週間お世話になり、ずーっとずーっと、折り紙に対する情熱を語っていただきました。

 

Paul Jackson

http://www.origami-artist.com/org_abstracts.htm

Miri Golan さんと夫婦で折紙活動をされています。平織りでの有機的な造形が得意ですが、ジャンルを選ばず幅広い作品を発表されています。大学でデザインに関する授業を多数持っています。イスラエル滞在中に、あちこちの大学に連れて行っていただきました。死海やエルサレムにも連れて行ってもらったのも良い思い出です。ポールジャクソンさんの書籍「デザイナーのための折りのテクニック」の翻訳の監修をさせていただいたご縁で、いろいろ親しくしていただいています。

 

デザイナーのための折りのテクニック 平面から立体へ

 

Robert J. Lang

http://www.langorigami.com/

折り紙界のスーパーマンです。折紙設計理論を確立し、TreeMakerという設計ソフトウェアを開発されています。そのソフトウェアを用いて作り出された精密な昆虫の折り紙は、少し離れると本物と区別できないほどです。見事な折り紙作品を多数発表される傍ら、論文、著書を執筆し、あちこちで講演して、大学での講義もこなし、そのバイタリティーには驚かされます。米国のアメリカ団体でも重要なポジションにいて、いろいろな啓もう活動をされています。日本にも頻繁に来られています。ラングさんの著書

Origami Design Secrets: Mathematical Methods for an Ancient Art, Second Edition

は、折り紙の設計理論に興味がある方には必読の書です。

 

 

Yuko Nishimura

http://www.yukonishimura.com/

下の写真は、上記のWebページで紹介されている西村さんの作品です。多数のプリーツから成る、陰影が繊細で美しい幾何学折り紙を得意とするアーティストで、筑波大学出身です。折り形デザイン研究所で活躍されています。茶室の空間造形に、折り紙の構造を取り入れるなど、日本の文化の新しい表現を試みたりされています。

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Bernie Peyton

http://berniepeyton.com/

野生動物の研究をされている方で、作品は、その経験に基づいた、生き生きとした動物たちがメインとなっています。台湾で開催された Origami Universe という世界最大規模の折り紙展示を成功に導いた立役者です。イタリアのコンベンションの招待者としてご一緒しました。ユーモアのある方で、楽しい話をたくさん聞かせていただきました。

 

以上、私とお付き合いのある方、というかなり偏った紹介の仕方をしましたので、他の方についても、インターネットで名前を検索すると、素敵な折紙作品がたくさん見つかると思います。

 

日本国内で活躍されている折り紙作家の紹介が、日本折紙学会内の、こちらのページにあります。

http://www.origamihouse.jp/works/harmo/profile/profile-domestic.html

また、上記以外にも、海外の折り紙作家についての紹介がこちらのページにあります。

http://www.origamihouse.jp/works/harmo/profile/profile-world.html

 

著名な折り紙作家の作品を自分でも折ってみたいという場合には、「端正な折り紙」山口真著(ナツメ社)がおススメです。タイトルの通り、端正な折り紙作品の作り方が、わかりやすい折り図で紹介されています。 

端正な折り紙

端正な折り紙

 

 

研究タイプ別アプローチ判定フローチャート

各国の主要大学を対象とした各種ランキングが毎年発表されるようになり、国立大学でさえも、大学間競争を勝ち抜くために、大変な努力が求められる時代となりました。

 

本務校でも研究戦略室というものが設けられ、学内の研究力を如何にして高めるかについての議論が行われています。

 

本日は、この会議に参加させていただき、いろいろな意見交換をすることができました。本学は、医学・芸術・体育までも含む総合大学なので、まったく異なる背景を持つ各領域から、多様な意見が出され面白く思いました。

 

私自身は、一にも二にも研究時間の確保が効率的なアプローチだと思っていて、この考えは出席者に完全に共有されるものと思っていたのですが、意外とそうでもないということがわかり、かなり驚きました。

 

私自身の研究はあまり予算を必要とせず、かなり個人プレーなところが多いので、何よりも時間が大事と感じていますが、研究予算の確保、研究に対するサポート体制、安定した身分、適切な人事、など、様々な視点からの意見が出されました。

 

予算さえあればサポート体制も作れるし、若手研究員を雇用することもでき、装置も設備も整えられ、ひいては研究のアウトプットも向上する。ということで、まずはお金。ということも納得できます。

 

ですので、研究のアウトプットを高めるための取り組みを、一律に設定することはできなくて、個々の研究テーマ、研究スタイルによって、大きく異なるということを再認識しつつ、ではどうしたらいいか、と言ったときに、研究のタイプ別に適切なアプローチを確認できるフローチャートがあればいいのではないかな、と思いました。

 

国家戦略とか大学の戦略とか、そういうマクロな視点ではなく、個々人の視点での話です。

 

というわけで、作ってみました。

 

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もうちょっと、気の利いたフローチャートになるかと思ったのですが、作ってみたら当たり前すぎて、意外と面白くない感じになってしまいました。。ですけど、せっかく作ったので、公開してみます。どなたか、改善していただければと。

 

私の場合は、最後の「じっくり考える時間が必要」な部類に入るのですが、ではどうしたら時間の確保ができるのか、自分でもよくわからず、残念な感じです(「こんなブログを書く時間を研究に回せ」と言われるのが目に見えていますが)

 

テストの問題をつくる立場から見た学力テストの問題

つい先日に、全国の小学6年生と中学3年生を対象とした学力テストが行われました。

 

早いもので、我が家の長女も6年生に進学したところだったので、

「テストあったの?どうだった?」

と聞いてみたところ、

「面白い問題があったよ」

という予想外の返事がありました。

 

難しかった、とか、簡単だった、という回答を想像していたのだけど。

 

その問題は次のようなものです。(設問(1)は省略)

 

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月の見かけの大きさの変化を、硬貨の大きさに見立てる問題になっています。

 

なるほど、月の見かけの大きさが日によって違うことを意識している人は少ないでしょうし、それを1円玉に見立てるということもなかなか思いつかないでしょう。知的好奇心を刺激するという点から、とても面白い問題と言えそうです。


私は仕事がら、期末試験の問題を定期的に作っていますから、このような問題を見ると、作問の立場からも気になります。

 

問題を作るときには、その問題によってどのような能力を測るか、ということを最初に考えます。

 

今回の学力テストは、点数によって合否を決めることではなく、学習の達成度を測ることが目的ですから、なおさら個別の問題には明確な意図があるはずです。

 

この問題の場合は、小学5年生で学習する、百分率による比の概念を理解しているか問う問題だと思いますが、もう少し基本的なところで言うと、次のような能力が身についているかを確認できそうです。

  • 比較的長い問題文を読み、問われていることを理解する文章読解力
  • 月と1円玉という具体的な対象物を、円と言う図形に落とし込んで同一視する、抽象化の能力
  • 百分率による比の概念、小数点を含む値の扱い
  • 正答を選んだ理由を言葉で説明する能力

 

以上のように、丸暗記ではなく総合的な能力を必要とする問題として、よくできていると思います。

 

実際に、この学力テストには解説資料が公開されていて、それぞれの設問がどのような趣旨で出されているかが詳しく説明されています。ページ数は100を超えています。

 

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解説資料(国立教育政策研究所)

http://www.sankei.com/module/edit/pdf/2017/04/syo6sansuu_kaisetsu.pdf


このなかに、今回の問題については、次のような記述がありました。

身近なものに置き換えた基準量と割合を基に,比較量に近いものを判断し,その判断の理由を言葉や式を用いて記述できるかどうかをみる。

さらに詳しい内容に興味がある場合は、資料に目を通してみるとよいでしょう。全体的によく考えこまれた設計になっているように思います。

 

私としては、月の見かけの大きさの大小の比率が、ちょうど1円玉と100円玉の比とほぼ同じであることを、作問者はよく知っていたなあということに感心しました。

この問題を見て、「面白い」と思った小学生が現にいるということは、作問者にとっても嬉しいことではないでしょうか。

 

例えば、この問題を解く中で、

「1円玉の直径ってちょうど2cmなんだ。だったら5個並べたら10cm。長さを測る道具に使えそう」

とか

「月の見かけの大きさって、日によって違うんだ。こんど確認してみよう。」

などのように、新しい興味が湧いてくる小学生もいることでしょう。

 

もしかしたら、「どうして1円玉は2cmなんだろう」「重さの比はどうなんだろう?」「本当の月の直径と1円玉の直径の比はいくつなんだろう」などと、いろいろ調べたくなるかもしれません。

 

このような興味を持たせることができれば、小学生に対する問題としては素晴らしいものではないでしょうか。

 

ちなみに、私が問題を作るときには、基本的な知識の理解を問う問題、その知識を使って実際の問題を解くことができるか問う問題、もう少し深く本質を理解しているか問う問題、そして最後に、いるかもしれない天才に向けた挑戦的な問題、という構成にすることが多いです。

 

問題を作る側のことも考えて、1つの問題に、どのようなメッセージが込められているか想像することも楽しいものです。

 

 

「学力評価」「教育」をキーワードに議論をすると取り留めなくなるので、今日は1つの問題の面白さと、その背景に対する推測のみ書くことにとどめます。

 

参考:

全国学力・学習状況調査:教育課程研究センター:国立教育政策研究所 

ミニイベント スーパームーンを見る会

月の大きさ | 月世界への招待 

講演やワークショップの内容の紹介

研究テーマとして「折り紙」を扱っているため、学会や大学以外にも、企業やイベント関係も含め、幅広いところから講演の依頼をいただく機会があります。

 

これまでの様子を振り返ってみると、昨年は12件、一昨年は15件の講演をしてきたので、月に1度くらいのペースといったところです。

 

講演と言っても、ただ話をするだけでは面白くないので、なるべく紙を折る体験をしてもらえるようにしています。

では実際に、その中で、どのようなことを話したり、どのような体験をしていただいているか簡単に紹介してみます。

 

以下の内容は、折り紙をテーマにした時の話です。いただける時間によって内容が異なるので、カッコの中は講演時間の目安です。

 

【 講演を基本とした場合 】

  1.  次のようなトピックを5分ずつ程度の配分で話します(45分)
    折り紙の歴史の簡単な説明、近代のアート作品の紹介、平坦折り条件、コンピュータを使った折り紙設計の紹介、折り紙設計ソフトウェアの実演、作例・応用例の紹介、まとめ
  2. 上記の1の内容に加えて、最後に簡単な曲線での折紙体験をしていただきます(60分~90分)
  3. 上記の1の内容を進める過程で、そのトピックにあった体験を複数回に分けて体験していただきます(ジャバラ折り、曲線での折りなど)。また、最近の折り紙研究をいくつかピックアップし、掘り下げた話をします。(120分~180分)

 

講演ではなく、体験をメインとした場合には、これまでに、次のような内容のワークショップをしてきました。

 

【 ワークショップを基本とした場合 】

 

  1. あらかじめ折り筋の付いた型紙を配布して、曲線を折る体験をしていただきます(1つ10分程度)

  2.  コピー用紙を配り、折り筋を手作業で付けることで、曲線を含む折り紙の制作を体験いただきます(1つ60分。6つの風車、ホイップクリームなど)

  3. 設計の方法を解説し、オリジナルの巻貝のかたちをつくってもらいます(60分)
  4. コンパスと三角定規を用いた、球体折紙の展開図の作図をし、実際に作るところまで行います(60分)(高校生、大学生対象)
  5. ソフトウェアの体験、カッティングプロッタを使ったオリジナル作品の制作体験をしてもらいます(3時間)

どれか1つというわけではなくて、上記のいくつかを組み合わせることもあります。

私自身は、コンパスと三角定規を用いた作図が、楽しくて学ぶところも多いと思っています。

 

毎回おなじ内容だと、しゃべる方も刺激がなくなってしまうので、少しずつ内容を変えたり、参加する方々にあわせて調整したりしています。一般向けに話をすることが多いので、高尚な学会にお呼ばれすると、ちょっと緊張します。それほど高度な内容ではないので、以前に、数学系の学会に呼ばれたときには、こんな内容でよいかとドキドキしました。

 

 

折り紙以外の話では、あまり声をかけていただく機会がないのですが、この夏にはプラレールの幾何について話をする機会をいただきました。今から楽しみです。

論文査読の話(どれだけ引き受けるべきか)

論文査読の依頼をどれだけ引き受けるべきか、というのは、ほとんどすべての研究者が共有する悩ましい問題と思います。

 

論文の質の維持のためにもピア・レビューの仕組みは無くてはならないものですから、コミュニティへの貢献、ひいてはアカデミアの世界の維持のためにも、できる限り、依頼された査読は引き受けたいものです。

 

実際のところ、自分が論文を投稿した時には誰かに査読をしてもらうことになるのですから、査読を引き受けるのは「おたがいさま」ということになります。

 

査読を通して、最新の研究論文に触れることができ、また評価をしなければいけないという責任感から内容を深く読むことになりますから、結果として得るものは多くあります。

 

以上のような理由から、私はこれまで基本的に査読の依頼は断らずにきました。ただ、最近は増える依頼と使える時間の兼ね合いから、なかなか難しいと感じることも多くなってきました。

 

査読の依頼は不定期に舞い込んでくるものなので、時間の確保が難しいときもありますし、自分の専門分野と少しずれていたりして、なかなか苦労することもあります。論文の内容によってはかなりの時間を要し、査読コメントをまとめるのも何かと大変だったりします(いろいろ書いてrejectとした論文が、忘れたころに再投稿されて、再査読になることも多々あります)

 

さらに最近では論文数自体が増えていますから、査読の依頼も増加傾向です。


ついこの前には、どういうわけかイスラエルの MINISTRY OF SCIENCE, TECHNOLOGY & SPACE というところから、助成金に対する申請書の査読依頼が届きました(興味深かったので、引き受けました)。日本でいうところの科研費の応募審査と言ったところでしょうか。

 

やっと、抱えこんでいた査読の仕事がなくなって、ほっとしたところに、また査読の依頼が届いたりすると、本当に引き受けるべきか戸惑うこともあります。

  

自分が所属する学会や、これまでに参加してきた国際会議の場合は、貢献したい気持ちが強くあるのですが、まったく関わりの無い論文誌や学会の場合は、やはりお断りしてしまうこともあります。


査読の仕事は基本的にボランティアで、たくさん引き受けたら研究費が増えるなどのメリットがあるわけでなく、断ったからと言って、何か不利に働くこともありません。そうでありながら、かなり時間を使うことになるのは事実なので、無分別にすべて引き受けるのも難しいかなあとも思います。

 

さてそこで、他の研究者の皆さんは、いったいどれくらいの査読を引き受けられているのかな、というのが気になります。

 

他人と比べて十分たくさん引き受けているという根拠があれば、断るときの罪悪感を少しは軽減できそうです。

 

一人の研究者が1年簡に査読すべき論文の数は、次の式で概算できそうな気がします。

 

世界中の論文誌に投稿される1年間あたりの論文数 × 平均的な査読者数 / 世界の研究者数

 

しかし各項目の値を調べるのはかなりの手間がかかりそうです。(論文の掲載数はわかっても投稿数はなかなか調べにくそう)

仮に値が求まったとしても、研究分野によって大きく異なるでしょうから、かなり乱暴な計算です。

 

んー、どうしたものか、と思ったのですが、少し視点をミクロに変えて、一人の研究者の立場で考えるとどうでしょう。すると、次の式で十分そうです。

 

1年間に自分が投稿する論文数 × 平均的な査読者数 / 論文の平均的な共著者数

 

一人一人の研究者が、この式で求まるだけの査読を引き受ければ、査読のシステムは回ります。

 

意外と簡単な式になりました。(もしかしたら、誰でも当然のように知っている考え方だったりするのでしょうか。。


論文査読だけでなく、学会の運営も基本的にはボランティアであり、アカデミアの世界はかなり研究者の貢献によって支えられているわけですが、学会の運営も多様化し、その負担は年々増える傾向にあります。

他方で、学内での校務も増える一方であり、またさらに業績評価の厳格化も進みつつあるなかで、高い品質を保ちながら査読のシステムを維持しつづけることが、今後次第に難しくなるのではないかと言う気もしています。

つくばエキスポセンターでの企画展と学芸員さんの仕事

今日から科学技術週間ということで、全国の科学館などで、多くのイベントが催されるようです。

stw.mext.go.jp


つくばには、駅から徒歩5分の場所につくばエキスポセンターという科学館があります。

つくばエキスポセンター

 

ここでは現在、
「3次元のかたち ~作る技術、感じる技術~」
という企画展が行われています。

企画展「3次元のかたち~作る技術、感じる技術~」 | つくばエキスポセンター


この企画展に、私は「監修」という立場で協力させていただきましたので、今回は、この監修の仕事と展示の内容を紹介したいと思います。

 

私のところへ最初に企画展の連絡が届いたのは昨年の10月下旬ごろ。

筑波大学が後援することになったので、協力して欲しいということで声をかけていただきました。

 

その時点で、すでに私の立体折り紙を含む、いくつかの展示物の案が候補として挙がっていたので、私の仕事は、それぞれの展示について実現可能性を検討し、全体のバランスをどうするか考慮しつつ、個別の展示は誰に依頼するのがよいかアドバイスすることでした。

 

年明けまでに何度か現地にて打ち合わせを行い、その結果として、筑波大学の教員を中心に出展依頼をし、それ以外は私が普段からお付き合いのある先生方に声をかけさせていただくことになりました。また、近くの企業様にもいくつか出展の協力をいただくことになりました。


このような理由から、私の立体折り紙を切り口に、全体的に折り紙に関する展示が多くなっています。折り紙の展示にはアーティストの千鶴緑也さん、愛知工業大学の宮本好信先生、東京大学の舘知宏先生に作品をご提供いただきました。普通の「折り紙」とは違った世界を楽しんでいただけると思います。

 

その他に、平面から立体を作る技術として、東京大学の五十嵐健夫先生、明治大学の五十嵐悠紀先生にも協力いただきました。

 

また3Dプリンタで出力した造形もあり、これには筑波大学の医工連携のプロジェクトでご一緒している大城幸雄先生にご協力いただきました。

 

さらに、筑波大学にてエンパワーメント情報学プログラムをとりまとめされている岩田洋夫先生には、バーチャルリアリティの体験機器を出展いただき、掛谷英紀先生には裸眼立体視ディスプレイの出展をいただきました。立体ディスプレイは、折り紙体験コーナーに設置し、私が折り紙を折っている様子を3D表示することとしました。


他にも、多数の展示がありますが、説明が長くなりますので、このあたりにしておきましょう。


具体的な展示内容が固まってからは、各出展者とのやりとりは学芸員の島さんがすべて取り仕切ってくださり、私の実質的な仕事はほとんどありませんでした。出展者の数がとても多いので、島さんの仕事の多さには傍から見ていて心配になるほどでした。

 

膨大な数のメールのやりとりを経て、各出展者と個々の作品の搬入の手配の調整をし、それぞれの解説パネルをお一人で全部作成し、各種機関へ後援依頼の申請をし、仕事の内容は多岐にわたるようでした。たぶん、私が見えていた範囲はほんの一部と思います。


地方の科学館ですので、お台場の科学未来館のような潤沢な予算があるわけではないので、チラシはイラスト屋さんのイラストを使ったお手製のものです。これも島さんが作っていました。


今回、監修という立場で企画展に関わらせていただいたことで、科学館の学芸員の仕事を間近に見ることができ、貴重な経験をさせていただきました。

 

 企画展「3次元のかたち~作る技術、感じる技術~」 | つくばエキスポセンター

 

以下は、この展示関係のツイートです。