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三谷純のブログ

ふしぎな 球体・立体 折り紙

本日、拙著「ふしぎな 球体・立体 折り紙」が発売されました。
発売前から予約購入してくださった方もいらっしゃると伺っており、大変光栄に思います。ありがとうございます。




この書籍には、表紙に掲載されているような立体的な折り紙作品の展開図が21種類収録されています。
展開図が印刷された用紙を書籍から取り外して、山折り線、谷折り線を指示通りに折ると、立体的な形が1枚の紙から折り上がるようになっています。


ここに収録されている作品は全て「軸対称形状を内包する形」であり、私が開発したプログラムを用いて設計されています。このプログラムを活用することで、「折り紙」という言葉で一般にイメージされる形とは異なる、一見風変りな形をした多くの作品が誕生しました。本書には、曲線を持つものも含め、バリエーション豊かな作品群を収録しましたので、折り紙や幾何学に興味をお持ちの多くの方に楽しんでいただければ幸いです。


さて今回、このような書籍の出版が可能となった背景として、出版社である二見書房さんの多大なるご協力があります。書籍化に向けて、多くのアドバイスをいただき、また編集およびDTP作業に大変ご尽力いただきました。ここに感謝申し上げます。


ところで、この書籍のキャッチコピーとして「世界初の3Dコンピュータ折紙が誕生」と謳われています。
正直に書きますと、私自身は「世界初」という言葉は入れていただきたくなかったのですが、「商品」として多くの方に手にとっていただけるような書籍を作るという出版社の意向もあって、このキャッチコピーが使われています。折り紙に深い造詣をお持ちの方にとっては、この表現に疑問を持たれる方もあるかと思い、ここに私からの補足を書かせていただきます。


まず、本書では正多角形の展開図を用いて、風呂敷で包むようにして形を表現するものを「風呂敷タイプ」、長方形の展開図を用いて、筒型を絞り込むようにして形を表現するものを「筒タイプ」と呼んでいます。どちらも、軸対称な形状を内部に含むような形をしています。
このうち、「風呂敷タイプ」のものについては、過去に複数の折り紙創作家の方が作品を作っています。つまり、本書で紹介されている作品と同類の作品が既に存在しており、この点においては、私が「世界初」ではないということを、記させていただきます。
古くは、「タトウ」と呼ばれる折り方で「平面多角形」が内包される包み方が数多く考案されてきました。また、クリス・パルマー氏によって、ポリパウチという呼び名で、多面体または軸対称形状を内包する作品が過去に設計されています。また、ロバート・ラング氏によって、本書に収録の「花瓶」と類似する作品が作られています(このような形を設計するためのコンピュータプログラムも存在するようです。本書の発売が決まってから知りました)。


一方で、本書で紹介されている「筒タイプ」と呼ぶものについては、設計手法が議論されている文献を見たことが無く、「風呂敷タイプ」と「筒タイプ」の両者を一般化して議論し、それぞれの設計手法をコンピュータ上に実装し、両者の3D形状および展開図の自動生成までを行ったのは、私自身が初めてではないかと思っています。また、このようにして設計した作品を書籍という形で世に出させていただいたのも、私が初めてではないかと思っています。言い訳のようにも聞こえるかもしれませんが、このように、総合的な意味で、初めて世に出るタイプの書籍であるとご理解いただければ幸いです。


私が知らないところで同類の書籍が過去に出されていた可能性もゼロではありません。その場合は、ご指摘いただければ幸いです。
今後、さらに新しい作品を世に出すことができるよう、努力していきたいと思っています。


私は、一枚の紙から曲線を含む立体的で美しい形が作れることを知った時には、強い衝撃を受けました。この感覚を、本書を通して多くの方と共有することができれば望外の喜びです。