先月の中旬にシンガポールで行われた、第5回折り紙の科学・数学・教育国際会議(5th International Conference on Origami in Science, Mathematics and Education and Folding Convention)での、各発表の概要はこちらのプログラムから見ることができます。
いまさらですが、その中の「Science, Engineering, Technology」のセッションにおいて発表がなされた11件について手短にまとめてみました。
- Technical Tessellations - Hidden Beauties:テッセレーションを基本とした十数種類の折りパターンをコンピュータ上に構築し、その伸展の様子をCGアニメーションで表示。これらの構造を工業分野に活用することを目指している。
- The Origami Crash Box:車のバンパーに組み込まれている衝撃緩衝部材に折り紙の構造を採用することで、衝撃吸収性能を高められるのではないかと言う提案。シミュレーションによって、形状の変化と性能を解析。
- A Simulator for Origami-Inspired Self-Reconfigurable Robots:折紙の展開図を、パネルがヒンジでつなげられた剛体モデルとしてコンピュータ内に構築し、剛体物理シミュレータによって、その折りたたまれ方を再現。ロボットへの応用を目指している。
- Functional 3D Materials Integration by Folding and Assembly:太陽電池パネルなどの機能性素材を折ることによって、さらに機能の優れた立体構造素材を構築する。
- Nanostructured Origami:マイクロメートルスケールの微小構造物の製造に折り紙の技術を応用する。シリコン上に薄膜構造を加工し、その一部を磁力を使って折り曲げることで微小な立体構造物を作ることができる。
- Energy absorption of thin-walled tubes with origami patterns:折り紙でよく知られる折りパターンを使った金属の筒を作成し、衝撃緩衝部材として使用した場合のエネルギー吸収能力と形状変化を物理シミュレーションによって評価する。
- Origami Folding and Foldability: a Structural Engineering Approach:折紙の剛体折り可能性の評価を線形代数を用いた運動学問題として扱う。折り曲げ箇所の剛性を指定するなどして、実際の物づくりへの応用を目指す。
- A CAD system for diagramming origami with a prediction of folding processes:一手先の折り操作を予測して表示する機能を備えた、折り図作成支援ソフトの提案。折紙の公理に基づく予測機能を繰り返し適用することで、コンピュータが膨大な数の形を自動生成できることを紹介。
- Development of an Intuitive Algorithm for Diagramming and 3D Animated Tutorial for Folding Crease Patterns:展開図折りは、慣れていない人には難しい。実際に開発したわけではないが、ここでは展開図の一部から折り図を生成したり、アニメーション表示をするなど、展開図折りを支援するためのソフトウェアの構想を提案。
- Folding Origami by Cell Forces:細胞の力を使うことで、微小な立体構造を作り出す手法を提案。100マイクロメートル程度の正12面体を実際に作成した。
- Folding Any Orthogonal Maze:直交格子上に迷路を作成するために必要な部品すべてを折り紙で作れることを示し、それらを展開図上に敷き詰めることで、任意の迷路を折紙で作れることを実証した。