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みたにっき@はてな

三谷純のブログ

折紙とランプシェード

電灯を包み込み、発する光をやわらかく加工するランプシェードには、多種多様な形があり、また様々な素材のものがありますが、「折紙」と「ランプシェード」は相性がいいように思います。
紙は光を透過し、笠または筒状の形は紙を折って作ることができます。紙を切って貼り合わせることも許容すれば、自由な形を様々に作れます。実際、私自身も大学の授業の中でペーパークラフトによるランプシェード作りを行ったこともあります。ランプシェードの制作は美術大学で課題のテーマに使われることも多いようです。
このように、紙で作るランプシェードは、誰でも手軽に形作りに挑戦できる、優れた題材と言うことができます。


最近の「大人の科学 No.29」では、LEDの光を折紙で包むことをテーマに、折紙作家の方々の作例が多数紹介されています。


一方で、商品化を考えた時には、紙をそのまま使用することは耐久性、防燃性、外観または製造時の加工性やコストなどから、難しい問題を生じます。使用する電灯との組み合わせも考慮すれば、各企業の技術の見せどころと言えるでしょう。
商品として扱われている、1枚の素材を折って作られたランプシェードとしては、LE KLINT社のものが有名です。細かい襞をもったもの、幾何学的な曲面の集合から構成されるものが特徴的です。


現在、東京ミッドタウンの21_21 DESING SIGHTで行われている展覧会にも、折紙の構造を持ったランプシェードが複数展示されています。この展覧会のメインは、REALITY LABによる折りたためる折紙の構造を持った服のデザインですが、これと同類のパターンを持った折りたためるランプシェードも試作され、今回のシリーズの一部という位置づけで会場に配置されています。使用する素材や加工法の決定までに大変な苦労をされたそうです。


デザイナの手による、紙を素材としたランプシェードとしては、イサム・ノグチ氏のAkariシリーズが有名です。今回展示されているランプシェードの制作においても、氏の作品をずいぶん意識されたと伺いました。


今回のREALITY LABによるデザインでは、服と同様に、折りたためるパターンがランプシェードに使われています。折りたためる円筒の構造については工学および幾何学の分野で海外でも古くから研究されてきました。例えば薄肉円筒の座屈変形を観察すると、折りたたみに必要となる山谷の折りパターンが自然発生します。ミウラ折りで有名な三浦公亮先生も、材料の圧縮破壊を観察してミウラ折りのパターンを発見したと言われています。特に今回のランプシェードの中には、円筒のねじり座屈変形時に見られる折りを含むものがあり、これはねじる様にして筒を折りたたむことができます。(直接は関係しませんが、シミュレーションのイメージ図をこちらのLANCEMORE社のWebページに見ることができます。)


径が一定の円筒ではなく径が変化する円錐も、やはり物理的に圧縮することで規則的なパターンが現れ、折り紙によって再現することができます。これについては、東京工業大学野島武敏先生が2000年前後に研究発表され、また同時期に折紙アーティストである布施知子氏によって様々な形が折られています。REALITY LABによって今回展示された服の一部には、この円錐構造を折りたたんだパターンが活用されています。


布施知子氏はこれまでに折紙に関する数多くの著作を世に出していますが、1998年の時点でランプシェードの制作も行っています。現在は販売されていませんが、その当時のカタログデータをいただいたので、ここで紹介させていただきます(PDF)。これらは折りたためるようにはなっていないそうですが、折りたたみ可能なランプシェードも現在開発中とのことです。


円筒を折りたたむための構造は、折りたためるランプシェードのデザインに活用できることはもちろんですが、ペットボトルや飲料缶の折りたたみや車の緩衝材の構造などに活用できるとも提案されています。
ところで、これまでの「円筒の折りたたみ」は、折りたたみの時に形が歪むことを避けられませんでした。紙のような素材であれば多少の歪みは許容されますが、剛体変形でないことから、建築物などに応用することは困難です。最近では、この「歪み」が発生しない筒の折りたたみが、東京大学の舘先生および三浦先生によって研究されています。身近な折紙も、よく見てみると、奥が深く面白いテーマを持っています。