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三谷純のブログ

内閣府の「総合科学技術・イノベーション会議」というところ

2016年の8月1日より、内閣府の総合科学技術・イノベーション会議という部署に週に3日の割合で出勤させていただいています。年度の切り替えということもあり、ここで1つ、科学技術イノベーション会議について簡単に紹介してみます。

(以下の説明は三谷個人の理解に基づいて書かれた文章であり、誤りが含まれる可能性があります。)

 

総合科学技術・イノベーション会議(CSTI)では、その名の通り、科学技術に関わる政策について、企画立案、調整などが行われています。

 

具体的にどのような議論がされているかは、次のページに膨大な資料が公開されているので、いくつか覗いてみると、なんとなく雰囲気がわかります。

総合科学技術・イノベーション会議(本会議) - 総合科学技術・イノベーション会議 - 内閣府

 

CSTIの大きな仕事のひとつに、我が国の科学技術基本政策を策定することがあります。

科学技術基本政策は、5年に1回作成され、現在は第5期の2年目にあたります。

 

第5期 科学技術基本計画の本文は次のPDFファイルにまとめられています。本文は52ページ程度なので、それほど多い分量ではありません。

http://www8.cao.go.jp/cstp/kihonkeikaku/5honbun.pdf

 

この科学技術基本計画は閣議決定されたものなので、基本的には、ここに書かれた内容に沿って、5年間の科学技術に関する施策を行っていくことになります。これは内閣府だけに限らず、文科省をはじめとする各省庁での取り組みも同様で、この基本計画はきわめて重要なものとなっています。

 

第5期 科学技術基本計画を一言で表すときのキーワードとして、Society5.0というものが登場します(p.10)。これは、狩猟社会(1.0)、農耕社会(2.0)、工業社会(3.0)、情報社会(4.0)に続く、新たな社会を意味するものとして説明されることが多く、いわゆるIndustry 4.0よりも広い範囲をカバーする社会全体の未来像という説明がされることもあります。

 

「Society5.0」は、新しい社会を予感させる魅力的なキーワードであり、科学技術基本計画を語るときには、きわめて頻繁に使用されるのですが、ややもすると、言葉が独り歩きしているような印象もあります。Society5.0では具体的にはどのようなものを指すのかがボンヤリとしがちでもあり、受け取る側によってイメージするものが異なってしまう、という問題点もあるのですが、科学技術基本計画に目を向けると、Society5.0は「超スマート社会」を指すものであり、超スマート社会とは

必要なもの・サービスを、必要な人に、必要な時に、必要なだけ提供し、社会の様々なニーズにきめ細かに対応でき、あらゆる人が質の高いサービスを受けられ、年齢、性別、地域、言語といった様々な違いを乗り越え、活き活きと快適に暮らすことのできる社会

とあります。そして、具体的に次の11の領域が挙げられています。

エネルギーバリューチェーンの最適化、地球環境情報プラットフォームの構築、効率的かつ効果的なイン フラ維持管理・更新の実現、自然災害に対する強靱な社会の実現、高度道路交通システム、新たなものづ くりシステム、統合型材料開発システム、地域包括ケアシステムの推進、おもてなしシステム、スマー ト・フードチェーンシステム、スマート生産システム

これらを丁寧に拾っていくと、Society5.0を構成するものがある程度見えてくるのではないでしょうか。

 

この5年単位の計画を、さらに年度単位に落とし込んだものが科学技術総合戦略で、「科学技術総合戦略2016」は次の場所に公開されています。

科学技術イノベーション総合戦略2016 - 科学技術政策 - 内閣府

この戦略に基づいた1年間の取り組みの評価などに基づいて、まもなく「科学技術総合戦略2017」が公開される予定です。

 

このように、我が国がどのような戦略をもって科学技術およびイノベーションの推進を行っていくかを検討し、立案し、国民に向けて公表し、各省庁に働きかけることが、「総合科学技術・イノベーション会議」である。

というのが、私の認識です。

 

以上の話は、基本的にはインターネット上の公開情報から得られるものにすぎないので、次回は、実際に科学技術・イノベーション会議で働いているという、実体験に基づいた話を書きたいと思います。