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みたにっき@はてな

三谷純のブログ

読書の記録「サピエンス全史」

最近話題になっている、サピエンス全史(ユヴァル・ノア・ハラリ著)を上下巻セットで購入して、この週末に読んでいました。

サピエンス全史(上)文明の構造と人類の幸福

サピエンス全史(上)文明の構造と人類の幸福

 

これはまたスケールの大きな内容で、久しぶりに心拍が早くなるような気持ちでページを繰ることになった書籍でした。

ホモ・サピエンスの登場前から現代にいたるまでの、人類の歴史を見事に書ききった大著と言えます。

日ごろの通勤時間などに、宗教や経済の実体とはなんであろうか、というような哲学的なことをぼんやり考えるときには、頭の中にモヤモヤした霧がかかっているような感じがするのですが、「それはすべて虚構である」と言う言葉で、一切合切ぜんぶ吹き飛ばしてしまうような明瞭な書きっぷりで、そのような物の見方ができるのだ、という感心とともに、それが正しいと思わせるような説得力のある構成に、唸らさせられました。

神などいないとする本書の主張と、まったく矛盾するようですが、この本を読むことで、まるで神の視点に立ったかのようにして、何十億人といういう人類が存在する現代社会がなぜ、どのようにして成り立っているかを俯瞰できる爽快感があります。

また、その一方で、本書が主張する「我々の世界は他の皆が信じているものを信じることで成り立っているものであり、それは何も実体のない虚構である」、という考えを受け入れることは、今現在の我々が拠って立つところの価値観の正当性を根底から揺さぶられるようで、不安な気持ちにもさせられます。

あらゆる宗教が隠し続けてきた、言ってはならない禁断の考えを、これでもかと書き綴ったものであり、この本を読むことで頭を抱え込んでしまうことになる人も多いのではないかと思います。

私自身は、宗教は大規模な共同体を維持するための創作物だという考えに対する反発は感じないものの、近代科学や資本主義、家族や国家のありかた、そして人権までも含めて、現在どっぷり浸かっていて否定することすら考える機会が乏しいこれら価値観すべてが、どれもこれも虚構である、と考えると、やはり心穏やかではなくなってしまいます。

著者が最後に書く、「私たちは何になりたいのか?」という問い、そして「私たちは何を望みたいのか?」という問いは私には重すぎる問いであるように感じました。

 

というように、久しぶりに哲学的な思索にふけりながら、そして、これは虚構なんだろうと思いながら、今日もネクタイを締めてスーツを着ての出勤をしてきたところです。

 

正確な記述は忘れてしまいましたが、「矛盾した世界観を同時に持つことができるのも、サピエンスの優れた能力である」というような内容も書かれていました。

まさに、だからこそ、虚構に満ちた現実と頭の中で想像する理想の社会との断絶にも折り合いをつけながら生きていけるのかもしれません。

 

久しぶりに、現実の問題が些末なことに思えてしまうようなスケールの大きな本でした。多くの人にもお勧めしたいですが、でも、あまりのめりこんでしまうと、虚無感に苛まれることになるかもしれません。

 

 

ちなみに、日本での初版発行後5か月で20刷りということで、すごい発行部数であることは間違いなく、英語版の原著「Sapiens: A Brief History of Humankind」は、Amazon.comで2800以上のレビューコメントがつき、平均評価が星4つ以上と、大変な評判になっているようです。

宗教を信じ、進化論を否定し、人種問題などを抱える国の人たちが、この本をどのように読んだかは気になるところです。