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三谷純のブログ

スペイン マドリードでの展覧会

9月18日~10月5日の期間、スペイン マドリードにて、 El Instante Fundacion の支援による折り紙作品の展覧会が開催されました。

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展示会場のエントランス(よく見ると Mitani の綴りが間違ってますが、後で修正されました。)

この展覧会は、コンピュータサイエンティストでありシェフでもある Miguel de Torres 氏とのコラボレーションで、私の曲線折りを特徴とする折り紙作品の展示とともに、その一部を皿に見立て、料理を盛りつけたものも展示されました。

 

企画自体は1年くらい前にお声をかけていただいたときからスタートし、4月ごろからはメールにて具体的な打ち合わせを進めてきました。今回は料理の盛りつけもあるし、食器がメインということで、器やコップ、ボールやトレーなど全27種類ものパターンをデザインし、いろいろな耐水紙も試したり、準備にかなりの労力を投じました。

満を持して、今回は現地での設営準備を含め、9月10日~21日の期間でマドリードに行ってきました。以降では、その時の様子を紹介します。

 

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滞在先の様子

現地では、El Instante Fundacion が提供する、部屋を使わせていただきました。共有キッチンや洗濯機などがあり、アーティストが中長期滞在できるように配慮されています。私は5階の部屋を使わせていただき、眺めがよく衛生的で、とても快適な生活をさせていただきました。

現地でいろいろ制作することを前提としていたので、カッティングプロッタ CAMEO を準備していただきました。3万円くらいの安価なものですが、最新版ではA3サイズをカットすることもでき、カットと折り筋の調整も可能で、ハイスペックなカッティングマシンがなくても、十分に事足りました。

 

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共有のキッチン

 

部屋には、真っ白な棚があったので、さっそく持参した食器風の折り紙作品を並べてみました。小さな食器屋さんのようです。

 

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もっていった食器風の折り紙作品を並べてみたところ

それ以外の作品は、郵送のコストや破損のリスクを考え、現地で制作することにしました。基本的には、折り筋の付いた状態で持っていき、現地では折るだけで済むようにしました。

下の写真の作品は主に2012年に設計したものですが、今でも私の代表的な作品と言えます。

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現地での制作の様子

さて、気になる展示会場ですが、そのあまりの広さに呆然としてしまいました。事前に聞いてはいたものの、実際に足を踏み入れてみると全然ちがうスケール間です。2階のテラス部分だけで十分そうで、メインのスペースにいたっては、バスケットボールの試合ができてしまいそうです。

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展示スペース(2階のテラス部分)

 

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展示スペース(メインスペース)

今回の企画で、現地にて大変親切にお世話してくださったのは、抽象絵画のアーティストである、ホセ・マリア・シシリアさんです。ホセマリアさんとは、以前にも岩手県でのアートイベントでお世話になるなど、何度かお会いして親しくしていただいて、今回の企画も、最初から最後まで面倒を見てくださいました。

 

このような広大な空間を目にして途方に暮れていたのですが、ホセマリアさん

「だいじょうぶ、だいじょうぶ。全然心配する必要ない。前には、作品3つだけのときもあったから。小さいやつね。」

と、悠長に構えています。本当に大丈夫かと心配でなりませんでした。

 

実際の設営は16日からということになったので、それまでの間は部屋で制作をするほかに特にすることが無いので、プラド美術館やメイン駅近くのエル・レティーロ公園を散歩したり、マドリードの街並みを散歩したりしました。

 

さて、いざ設営となってみると、今までの概念が覆されることのオンパレード。ホセマリアさんの指示で、当初の予定や現地での作業が二転三転して、てんやわんやの大騒ぎとなりました。

以下、Twitterでのツイートの内容です。

 

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ここに来るまでは、「折り紙作品」を見てもらうつもりだったのですが、そうではなくて「折り紙作品がある空間」を見てもらうことが目的だと知りました。

いろいろ並べるのではなくて、まさに「引き算」の発想で、あれもこれも取り除いて、ほんとうに数点の作品だけで空間を作ることになりました。

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たくさん作って準備した作品群のほとんどが目に触れないことになりましたが、それはそれで、よい勉強になりました。広大な空間だったので、予想外です。

10準備して、実際に目に触れるのは2くらい。
来ていただく人には、その見えない8割をなんとなくでも感じ取ってもらえればと思います。

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ホセマリアさんからのダメ出し。

かわいらしくたくさん並べようとしたとき→「オーナメントじゃないんだから、そんなのダメ」

見やすい位置に並べようとしたとき→「その位置だと普通だからダメ」

作品とその展開図の対応がわかるように並べたとき→「教育目的じゃないのだから、そんな必要はない」

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というわけで、最終的な展示はこんな風になりました。

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ということで、どうにかこうにか展覧会の開催までこぎつけたのでした。

当初の予定が完全に覆ったわけですが、ホセマリア氏という本物のアーティストと時間を共有でき、多くを学んだ気がします。

 

以下、雑感をいくつか。

・スペインのお国柄というか、スペイン人の気質はとてもおおらかでアバウトで、なんでもキッチリカッチリ予定通りにこなそうとする日本人の気質は正反対な気がしました。

・つい先日に訪れた中国では電子マネーが広く普及している印象でしたが、マドリードではほとんどのやりとりが現金のようでした。路上で喫煙している方も多く見かけました。

・宿泊先にエレベーターはなかったので、5階の部屋と展示会場との間を1日に何往復もして、かなり足腰が鍛えられました。

・ホセマリアさんには、本当に親切にしてもらって、プラド美術館やレティーロ公園を案内してもらったばかりではなく、お手製の味噌汁(味噌スープ)をたくさん作っていただいたり、日常も手厚くサポートしていただきました。

 

展覧会のプレスリリース:

https://docs.wixstatic.com/ugd/8968d0_0565be86032542ca99716dbc97fdc78f.pdf

 

展覧会の紹介記事:

https://www.elinstantefundacion.org/elpliegue

 

一連のツイート

https://twitter.com/jmitani/status/1174051507425161219

 

最後に、現地で作った作品も含めて、全部を棚に並べた様子。

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