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三谷純のブログ

折り紙建築の設計

小学生の頃、自宅にあった茶谷正洋先生の「折り紙建築」の本に感動して、収録されていた飛び出すカードをたくさん作った記憶があります。


折り紙建築型紙集―オリガミック・アーキテクチャー パターン・ブック

折り紙建築型紙集―オリガミック・アーキテクチャー パターン・ブック


切り取って作ったら無くなってしまうので、トレーシングペーパーに一生懸命写し取って、それをまた画用紙に写すという、手間ひまをかけて作ったものです。


拡大版を作りたくて、定規で測った寸法を元に計算したりしたものの、うまくできなくて泣きじゃくったのは、小学校低学年の頃の良い思い出です。


この「折り紙建築」と同じ原理の飛び出すカードを自分でも作りたくて、
ポップアップカードデザイナーとか、ポップアップカードデザイナーPROなどを大学生時代に開発したりしていました。

http://www.tamasoft.co.jp/craft/popupcard/


自分で作っておいてなんですが、このようなソフトウェアがあれば、
飛び出す原理を知らなくてもあっという間に形ができてしまいます。


あとは、ソフトウェアが出力する展開図データを使って、カッティングプロッターで切り込みと折り筋を付ければ、
飛び出すカードができてしまうのですから、隔世の感があります。


昨日、気分転換に次のようなものを作ってみました。
久しぶりに作ったポップアップカードです。形に意味はありません。。

展開図はこちら。


これをTwitterで公開したところ、ポップアップアーティストの HIROKO MOMOI さんから、一部分が構造的に不安定のようだとご指摘いただきました。


HIROKO MOMOI さんは、驚くほど精巧で綺麗なポップアップを多数制作されてきた、ポップアップカードのプロフェッショナルです。
HIROKOさんのWebページ: http://www.geocities.jp/h_pdr/index-jp.html


ご指摘は正しくて、下図の左側のような構造が含まれていました。


ポップアップカードを剛体パネルとヒンジの組み合わせだとみなすと、
上の図の右側は、自由度が1で、カードの開閉によって形が一意に決まります。
一方で、左側は自由度が1より大きく、形が一意に決まりません。
このような構造は、なるべく避けるのが望ましいです。


ところで、実際にポップアップカードを作ってみると、このような構造的な問題だけではなくて、
「紙の座屈」という材料力学的な要素も、作りやすさ(カード開閉時の安定度)に影響してきます。
それは、どのような要素だろうか? と少し考えてみたのですが、正直よくわかっていません。

とりあえず、次のような3種類の異なる要素が考えられそうです。


(a) 機構に自由度が残されている ← 形が決まらない
(b) ヒンジに強い抵抗がある場合にパネルに影響を与える ← 座屈する
(b1) パネルが細長すぎる
(b2) ヒンジの抵抗が一様でない
(b3) ヒンジの抵抗力がまっすぐ伝達しない
(c) パネルの自重の影響が無視できない場合に問題がある ← たわむ


他にあるでしょうか?


折り紙建築のようなポップアップカードを自動で生成するような研究は過去にありますが、
上記のような力学的な観点からの考察は無いようです。

例えば。

Xian-Ying Li, Chao-Hui Shen, Shi-Sheng Huang, Tao Ju, and Shi-Min Hu.
Popup: Automatic Paper Architectures from 3D Models
ACM Transactions on Graphics (Proceedings of SIGGRAPH 2010), 29(4): article 111.
http://cg.cs.tsinghua.edu.cn/people/~xianying/Papers/Popup/index.html