みたにっき@はてな

三谷純のブログ

4OSME

折紙の国際学会「4OSME(The Fourth International Conference on Origami in Science, Mathematics, and Education)」の2日間が無事に終了しました。発表は70件近くあり、参加者も多く、思ったよりも規模の大きいモノでした。各セッションで様々な話を聴いたのですが、いやいや非常に面白い話が盛りだくさんで、とても充実した2日間でした。脳みその普段使っていない箇所がいっぱい刺激された感じです。
折紙創作家の方を始め、数学、生物、医学、建築、工学、教育、アート、コンピュータサイエンスなどなど、様々な分野の専門家が「折りたたむ」ということを対象とした研究を熱く発表してくれて、学際的でとても斬新でした。
こういう世界もあったのか、と目から鱗な感じです。
「折紙の研究」と言うと、えっ、世の中の役に立つの? って思われがちですが、以下、今回の発表で挙げられた活用分野のメモ。
・教育:小中学校での幾何学の学習への応用。定理の証明などを折紙を用いて実践。
・医学:ステント留置術(金属の網状チューブを血管に入れて広げる治療)のための効率的な折りたたみと拡張のための技術。
・工学:車のエアーバックの折りたたみ方。宇宙船の電池パネルの折りたたみ。地図の折りたたみ。ナノスケールの立体構造物の構築への応用。
・建築:折りたたみによる変形を伴う建造物。
・数学:折紙で作図できる図形の記号論理的な証明問題。曲面折紙の数学的な考察。平坦に折りたためる展開図のパターンの解明。面の重なり順の決定。折紙作品の設計手法。折り方の推定。などなど様々な幾何学的問題(これだけでいくつにも分野が分かれる)。
・アート:アート表現。今までにない新しいアプローチでの造形。技法。
コンピュータサイエンス:CG表示。折りたたみシミュレーション。折り図の生成手法。新しいソフトウェア。ユーザーインタフェース。新規作品の設計手法。
・生物:植物の開花と折紙の関係。生物の構造(巻き貝、アンモナイト)などの折紙による表現。
その他、気づいたこともろもろ。
・会場では折紙を片手に話を聴いている方が多数いる。
・折紙が国境を越えた一つのコミュニケーションツールになっている。
・曲面折紙はまだ難しい問題で今後の研究の余地がある。
・「折り方」を効率的に他者に伝える手段にはまだ研究の余地がある。
・日本以外の国で、折紙をサイエンスの側面から捉えた研究が盛んに行われている。
・「設計」の概念が導入されて、目的とした形はほぼ作成できるようになっている(らしい)。
・折紙好きな人はMacユーザーが多い。